風呂の日 (記念日 毎月26日)
日本人が毎日湯船につかる習慣は、世界的に見てもきわめて特異な文化です。欧米では多くの場合シャワーで済ませるのが一般的ですが、日本では「お風呂に入る」といえば湯船への全身浴を指すことが多く、疲れをとり、一日を締めくくる儀式としての意味を持っています。その起源は仏教伝来とともに広まった沐浴の慣習にまでさかのぼります。
6世紀に仏教が伝わると、奈良時代の寺院では「施浴(せよく)」と呼ばれる慈善的な入浴の場が設けられ、庶民にも清めの文化が広がりました。江戸時代になると銭湯が庶民の憩いの場として繁盛し、単なる衛生施設を超えた社会的な交流の空間として機能しました。当時、家庭内での風呂は火事の危険から禁止される地域もあり、銭湯は生活インフラとして不可欠な存在でした。
銭湯の件数はかつて全国に約2万軒以上ありましたが、戦後の高度経済成長期に家庭風呂が急速に普及し、現在では数千軒規模にまで減少しています。1967年にはシステムバスルームの量産化が始まり、一般家庭への内風呂の普及をさらに加速させました。それでも今日、地域のコミュニティ拠点として、あるいは個性豊かなアート銭湯として、銭湯は根強いファンを持ち続けています。
毎月26日は「風呂の日」です。東京ガス株式会社が1985年(昭和60年)に「ふ(2)ろ(6)」の語呂合わせで制定したもので、「家族で風呂に入って親子の対話を」という温かな思いが込められています。1990年には「風呂文化研究会」が発足し、日本の風呂文化の魅力を国内外に発信する活動が本格化しました。
「風呂」という言葉の語源については諸説あります。物を保存するために掘った洞窟状の部屋「室(むろ)」が転じたとする説、あるいは茶の湯で使われる炭火の器「風炉(ふろ)」に由来するという説などが知られています。いずれにせよ、湯につかることが日本人の生活と精神文化に深く根ざしていることは確かです。語呂合わせの文化の豊かさも、この記念日の周辺に表れています。2月6日の「お風呂の日」に始まり、4月26日「よい風呂の日」、5月26日「源泉かけ流し温泉の日」、6月26日「露天風呂の日」と、毎月26日にはさまざまな入浴関連の記念日が並んでいます。銭湯や温泉施設では入浴料の割引などのイベントを行うところもあり、日常の中に小さな楽しみを見つける日本的な発想が息づいています。