散髪の日 (記念日 3月8日)
江戸時代、髪結師たちは路上や橋のたもとに「髪結い床」と呼ばれる小屋がけの店を構え、武士や町人の髪を結いました。その床が固定された店舗へと発展し、やがて「床屋」という呼び名が定着しました。つまり「床屋」とは、場所そのものを指した言葉が職業名に転じたものです。
明治維新とともに欧米文化が怒涛のように流入し、理髪業も大きく様変わりします。明治4年(1871年)には東京・常盤橋御門外の髪結床に「西洋風髪剪所」の看板が掲げられ、赤・白・藍色に塗り分けられたサインポールが立てられたと記録されています。このサインポールは西洋の理髪店に古くから伝わるシンボルで、中世ヨーロッパで理髪師が外科手術も兼ねていた名残とされています。同じ年に出された「散髪脱刀令」は武士の髷(まげ)を解禁し、洋風の短髪「ざんぎり頭」が新時代の象徴となりました。「ざんぎり頭を叩いてみれば、文明開化の音がする」と歌われたように、散髪そのものが近代化を体現していたのです。
3月8日は「さん(3)ぱつ(8)」の語呂合わせから「散髪の日」とされています。愛知県犬山市のヘアサロン「saloon hair」(サルーンヘアー)が2015年(平成27年)に制定し、業界の活性化と精神衛生の向上を目的に掲げました。散髪後に感じるあの清々しさは、単なる気分ではなく、長い歴史のなかで人々が共有してきた感覚かもしれません。
現在、日本の理容室は全国におよそ10万店以上あるとされています。コンビニよりも多いとも言われるほど身近な存在でありながら、その起源は鎌倉時代にまで遡ります。約800年の歴史を持つ散髪文化は、形を変えながらも日本人の暮らしに根付き続けています。