予祝の日 (記念日 4月9日)

予祝の日

春、満開の桜の下に集まって酒を酌み交わすお花見は、単なる宴会ではありません。秋の豊作をあらかじめ祝う「予祝(よしゅく)」の行事として、古くから日本人の暮らしに根づいてきた文化的な儀礼です。桜の花を稲の花に見立て、その満開ぶりから実りの秋を想像し、先に祝うことで願いを現実へと引き寄せる。その考え方が「予祝」です。

予祝とは、期待する結果をあらかじめ模擬的に祝うことで、その通りの結果を得ようとする俗信にもとづいた行為です。農耕儀礼の一つとして、特に稲作を中心とした農業が暮らしの根幹を担っていた時代に広く行われていました。旧暦の1月15日にあたる「小正月」は、その予祝行事が集中する日として知られています。大正月(1月1日)が年神様を迎える「神迎え」の色彩を帯びるのに対し、小正月は農耕の予祝儀礼の色彩が濃くなります。田植えのまねをして豊作を祈る「庭田植(にわたうえ)」、繭の豊収を願って作られる「繭玉(まゆだま)」、豊熟した粟や稗に見立てた「粟穂稗穂(あわぼひえぼ)」、田畑を荒らす害鳥を追い払う「鳥追(とりおい)」など、地域によって多彩な形をとりながら、日本各地に受け継がれてきました。

4月9日は「予祝の日」として、人間力大學の予祝プロジェクトが制定した記念日です。「よ(4)しゅく(9)」と読む語呂合わせが日付の由来で、2020年(令和2年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録されました。

人間力大學は、2014年(平成26年)8月に大嶋啓介理事長が創設した学びの場で、東京校・桑名校・ちばらき校の3校を展開しています。仕事や家庭の基礎となる人格・精神面を高めることを目的とし、講演会には年間5000人以上が参加します。同プロジェクトが「予祝」を現代に広めようとする背景には、先人が農作業の苦労を乗り越えるために培ってきた知恵や精神性を、現代の生活にも活かしてほしいという思いがあります。

「先に祝う」という発想は、目標を達成した未来の自分を鮮明にイメージさせ、行動を後押しする心理的な効果ともつながります。農村の共同体が長い年月をかけて育んだこの前祝いの文化は、現代においても人々の心に響く普遍的な力を持っています。桜を眺めながらその成り立ちを思えば、お花見の風景はきっと違って見えてきます。