オーベルジュの日 (記念日 4月21日)

オーベルジュの日

1986年(昭和61年)4月21日、神奈川県・箱根に日本初のオーベルジュが誕生しました。その名は「オーベルジュ オー・ミラドー」。フランス語で「見晴らし台」を意味するこの施設を開いたのは、シェフ・勝又登です。芦ノ湖を望む高台に立ち、その土地の食材と空気を料理に込めるというコンセプトは、日本における食と旅の文化に新たな扉を開くことになりました。

「オーベルジュ(Auberge)」とは、フランス語で「宿屋」を意味する言葉です。その歴史は中世ヨーロッパにまで遡り、旅人が地元の料理を味わいながら一夜を過ごす場として発展してきました。現代では、その土地の食材を活かした本格料理を提供するレストランに宿泊施設を併設した施設を指し、単なる旅館やホテルとは異なる「食を目的とした宿」としての位置づけが定着しています。

勝又登は1946年、静岡県富士市生まれ。1969年に渡欧し、オランダの日系ホテル勤務を経てパリ・ニースでフランス料理の修業を積みました。帰国後は東京・西麻布に「ビストロ・ド・ラ・シテ」(1973年)、六本木に「レストラン オー・シザーブル」(1978年)を開店し、日本のフランス料理普及に貢献してきました。ヨーロッパ修業時代に肌で感じたオーベルジュの魅力——食通や文化人が滞在しその土地の風土をまるごと体感できる空間——を日本に根付かせることが長年の目標でした。「オーベルジュ オー・ミラドー」は22室の客室を備え、ダイニングルームの暖炉は理想の仕上がりを求めて3度作り直したと伝えられています。勝又が掲げる「土地を料理する」という哲学は、食材にとどまらず、建物・景観・空気感まで含めてその場所を表現することを意味します。定番メニューを持たず常に進化し続けるスタイルは、開業から40年近く変わっていません。

4月21日はこの開業日にちなんで「オーベルジュの日」と定められています。日本オーベルジュ協会が制定し、一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録されました。春の訪れとともに素敵な旅の始まりをという願いも、この日付に重ねられています。勝又は2007年に日本オーベルジュ協会理事長に就任し、2012年には農林水産省から「料理マスターズ ブロンズ賞」を、2017年には「シルバー賞」を受賞しています。