悪妻の日 (記念日 4月27日)

悪妻の日

「ぜひ結婚しなさい。よい妻を持てば幸せになれる。悪い妻を持てば私のように哲学者になれる」——これは古代ギリシアの哲学者ソクラテスが残したとされる名言です。4月27日の「悪妻の日」は、紀元前399年のこの日に毒杯を飲んで亡くなったソクラテスの妻・クサンティッペが、西洋で「悪妻の代名詞」として名高かったことにちなんでいます。

クサンティッペとはギリシア語で「黄色い馬」を意味する名前です。彼女がどれほど「悪妻」だったかを示すエピソードは枚挙にいとまがなく、なかでも有名なのが「水かけ事件」です。激しくまくしたてても夫がまったく動じないため、とうとう水を頭からぶっかけてしまったのだとか。しかしソクラテスは平然と「雷の後に雨はつきものだ」と言い放ったといいます。口やかましい妻への皮肉とも、哲学者らしい泰然自若の態度とも取れる一言です。

また「セミは幸せだ。なぜなら物を言わない妻がいるから」というソクラテスの言葉も伝わっており、クサンティッペがいかに口うるさい人物として語られてきたかがわかります。こうしたエピソードの数々が積み重なって、彼女の名は2400年以上にわたって「悪妻」の象徴として語り継がれてきました。

ただし、現代の歴史研究では「後世の作り話が多く含まれており、クサンティッペの本当の姿はほとんど分かっていない」とされています。プラトンの著作『パイドン』には「妻としても母としても何ら貢献をしなかった」という厳しい記述がある一方、獄中のソクラテスを思って激しく嘆き悲しむ様子も描かれています。夫の処刑を前に取り乱す姿は、口やかましいだけの悪妻というよりも、深く愛し、深く悲しんだひとりの女性の姿のようにも映ります。ソクラテスの弟子たちが残した記録はどれも男性目線であり、彼女が本当にどのような人物だったかは、今となっては知るすべもありません。

なお、同じ4月27日には「哲学の日」も制定されており、ソクラテスの命日にちなんでいます。「悪妻の日」と「哲学の日」が同じ日に並ぶのは、ある意味でクサンティッペとソクラテスが不思議なかたちで今も寄り添っているようで、なんとも皮肉な縁といえます。