爪切りの日 (年中行事 1月7日)
お正月の間、刃物を使うことは「良い縁を切ってしまう」として忌まれてきました。年が明けてから初めて爪を切るのは、七草粥を食べる1月7日と決まっていました。この風習を「七草爪(ななくさづめ)」といい、「七日爪(なのかづめ)」「菜爪(なつめ)」など地域によってさまざまな呼び名があります。現代のような爪切りがなかった時代、爪は小刀などの刃物で削るように切るのが一般的でした。正月に刃物を使えば怪我をして血が出ることもあり、お正月を「穢れ」で汚すことを人々は強く恐れました。そこで刃物全般の使用を避ける慣習が生まれ、爪を切るのも七草の日まで我慢するのが当たり前になっていきました。
七草爪の具体的なやり方はこうです。七草粥の残り汁や、七草を水に浸したものを茶碗に入れ、指先をしばらく浸けて爪を柔らかくしてから切ります。この方法で新年最初の爪を切ると、その年は風邪をひかず病気にもならないと伝えられてきました。七草粥が邪気を払い無病息災をもたらすという信仰が、爪を切る行為にも重なったわけです。
七草粥の習慣そのものは平安時代に大陸から伝わりました。1月7日は五節句のひとつ「人日の節句」にあたり、宮中では七種の若菜を入れた羹(あつもの)を食べる儀式が行われていました。そこから民間に広まる中で、七草の持つ「邪気払い」の力が爪切りの風習とも結びついていったとみられています。
七草爪の記録は東北から関西、静岡など全国各地に残っており、江戸時代の風俗を記した『古事類苑』にもその記述があります。少なくとも江戸期には広く定着していた習慣と考えられています。七草粥を食べるついでに爪も切る、というごく日常的な所作の中に、長い歴史が積み重なっています。