さんま寿司の日 (記念日 1月10日)

さんま寿司の日

骨ごと食べる寿司が、三重県熊野市には1500年以上前から伝わっています。産田神社の神事で供えられてきた「さんま寿司」は、中骨をあえて抜かずに仕上げるのが流儀です。「気骨のある子に育ってほしい」という親の願いを、一本の骨に込めた料理として、今も地域に息づいています。

産田神社は、日本書紀にも登場する古社です。女神・イザナミが火の神カグツチを産んだ地とされ、創建は崇神天皇の時代とも伝わります。毎年1月10日の大祭では「奉飯の儀」が執り行われ、神前にはさんま寿司・汁かけ飯・赤和え・御酒の膳が供えられます。子どもの健やかな成長を願うこの神事は、1000年以上の歴史を持つ記録が残されており、さんま寿司はその中心的な供物として欠かせない存在です。熊野灘でとれた脂の少ないさんまを背開きにして塩漬けにし、地元特産のみかん酢でしめたうえで、頭と尾をつけたまま姿よく酢飯にのせて押し寿司に仕上げます。脂が程よく抜けた熊野灘のさんまは保存食にも向いており、祭りや正月料理として各家庭でも昔から作られてきました。みかん酢の爽やかな酸味が、さんまの旨みを引き立てる素朴な味わいです。

この文化を次の世代へつなごうと、熊野市の「さんま寿司保存会」が2004年(平成16年)に1月10日を「さんま寿司の日」として制定しました。保存会は毎年、製造実演や販売イベントを通じて地域の食文化継承活動を続けています。さんま漁の発祥地として知られる熊野市では、さんま寿司のほかにも「熊野鬼城太刀魚」など豊かな海の幸が根付いており、海と神事が育んだ食の歴史を今に伝えています。熊野を訪れる機会があれば、みかん酢が香るさんま寿司をぜひ味わってみてください。