2025年7月27日発表、植物内糖輸送をリアルタイム計測する新センサ開発
ベストカレンダー編集部
2025年7月27日 18:46
糖輸送リアルタイム計測技術
開催日:7月27日

植物体内への糖輸送をリアルタイムで監視する新技術の開発
2025年7月27日、国立大学法人岡山大学、早稲田大学、北九州市立大学の共同研究により、植物の茎や果実内に刺入して糖の動きを測定する「植物刺入型多酵素センサ」が開発されました。この技術は、植物内のショ糖輸送をリアルタイムで計測するもので、農業や植物生理学の研究において大きな期待が寄せられています。
本研究の成果は、科学研究費補助金を受け、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業に基づいています。2025年6月8日には、国際的な科学誌「Biosensors and Bioelectronics」にも掲載されました。

研究の背景と目的
植物の糖輸送は、光合成や生育、環境応答において重要な役割を果たしています。これまで、植物内部に持続的に挿入できる高感度センサを実現することは困難でした。しかし、本研究では、酵素反応を利用して電流信号を得る自己発電型バイオセンサを開発し、糖輸送の連続的かつ定量的な可視化に成功しました。
この技術により、植物の生理学的な理解が深まり、スマート農業の実現にも寄与することが期待されています。

植物刺入型多酵素センサの詳細
開発されたセンサは、以下の多酵素電極を搭載しています:
- グルコースオキシダーゼ
- インベルターゼ
- ムタロターゼ
これらの酵素を利用することで、ストロベリーグアバの茎および果実内でのショ糖動態を24時間リアルタイムで測定することが可能です。また、安定同位体標識水を用いた検証により、日本杉の葉からの光依存的な水とショ糖の吸収も確認されています。

論文情報
本研究の詳細は、以下の論文にて発表されています:
雑誌名 | Biosensors and Bioelectronics |
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論文名 | A Plant-Insertable Multi-Enzyme Biosensor for the Real-Time Monitoring of Stomatal Sucrose Uptake |
執筆者名 | Shiqi Wu, Wakutaka Nakagawa, Yuki Mori, Saman Azhari, Gábor Méhes, Yuta Nishina, Tomonori Kawano, Takeo Miyake |
掲載日時 | 2025年6月8日 |
URL | https://doi.org/10.1016/j.bios.2025.117674 |

今後の展望と応用可能性
この新しいセンサ技術は、農業分野におけるスマート農業の実現に寄与するだけでなく、植物生理学の研究においても重要な役割を果たすことが期待されています。具体的には、植物の成長や環境応答をより正確に理解するためのツールとして機能するでしょう。
また、リアルタイムでの糖輸送の監視は、作物の生産性向上や、持続可能な農業の実現にも寄与する可能性があります。農業の効率化や資源の最適化が進む中で、この技術は非常に重要な役割を果たすでしょう。

研究資金と支援
このプロジェクトは、以下の資金提供を受けています:
- 科学研究費補助金
- 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 さきがけ「電子・イオン制御型バイオイオントロニクス」
まとめ
本研究により開発された「植物刺入型多酵素センサ」は、植物体内の糖輸送をリアルタイムで監視する革新的な技術です。この技術は、農業や植物生理学の研究において新たな可能性を切り拓くものであり、今後の発展が期待されます。
項目 | 詳細 |
---|---|
技術名 | 植物刺入型多酵素センサ |
開発機関 | 早稲田大学、北九州市立大学、岡山大学 |
計測対象 | ショ糖動態 |
測定可能な植物 | ストロベリーグアバ、日本杉 |
発表論文 | Biosensors and Bioelectronics |
この技術により、植物生理学の理解が深まり、持続可能な農業の実現に向けた新たな道筋が示されることが期待されます。
参考リンク: