京都大学が設立 応用カオスフォーラムの狙いと計画
ベストカレンダー編集部
2025年8月25日 05:55
応用カオスフォーラム設立
開催日:8月25日
産官学連携を軸に再始動した「応用カオスフォーラム」設立の背景
2025年8月25日 00時00分、京都大学大学院情報学研究科物理統計学分野より、第一回応用カオスフォーラムの開催について公表がなされました。本フォーラムは、カオス理論とその社会実装を念頭に置き、産業界・行政・学術界が連携して共同研究や実証試験を推進することを目的に立ち上げられた組織です。
発表文によれば、このフォーラムは単発のシンポジウムではなく、継続的な連携と実装を目指すプラットフォームとして設計されています。特に短期地震予知技術などの重要な社会課題にカオス理論を適用し、早期社会実装を促進することが強調されています。
設立の経緯と梅野健教授の役割
設立の中心人物は京都大学大学院情報学研究科物理統計学分野の梅野健教授(PI)であり、梅野教授は2006年4月に日本応用数理学会において応用カオス研究部会を創設し、2025年3月まで主査を務めてきました。この長年の活動と経験を踏まえ、産官学連携を促進する場としてフォーラムを立ち上げる運びとなりました。
梅野教授のリーダーシップは、学内外での共同研究誘導や学会活動の実績に基づくものであり、今回のフォーラム設立は、カオス分野の研究を学術的な枠を超えて実社会へとつなげるための具体的な手段として位置づけられています。
- 発表日
- 2025年8月25日 00時00分
- 発表機関
- 京都大学大学院情報学研究科物理統計学分野
- 議長
- 梅野健(京都大学大学院情報学研究科物理統計学分野)
研究テーマと実践に向けた具体的取り組み
本フォーラムでは、カオス理論の理論的進展と実社会への応用を両輪として扱います。京都大学大学院情報学研究科物理統計学分野は、データサイエンス、超一般化中心極限定理(超一般化CLT)、カオスCDMA、地震前兆現象検出アルゴリズムCRA(相関解析法)など、多岐にわたる最先端研究を行っています。
これらの研究テーマは、単に学術的関心に留まらず、暗号技術や通信方式(カオスCDMA)、自然災害対策(地震予知技術)など、具体的な社会的応用分野に直結しています。フォーラムはこれらの技術を用いた実証試験や共同プロジェクトを推進する場として機能することを目指します。
主要な研究テーマと解説
フォーラムで取り扱う主要な研究テーマは下記の通り明記されています。各項目は理論的検討と実証的検査の双方を含む取り組みとして設計されています。
以下の表は、それぞれのテーマの概要と期待される社会的応用を整理したものです。
| 研究テーマ | 概要 | 期待される応用 |
|---|---|---|
| データサイエンス | 大規模データ解析、確率統計手法の応用と開発 | 予測モデルの精度向上、災害予測・社会インフラの最適化 |
| 超一般化中心極限定理(超一般化CLT) | 確率分布の一般化に関する理論的研究 | 不確実性評価、リスク解析、信号処理の基盤理論 |
| カオスCDMA | カオス理論に基づく通信符号化技術 | 暗号通信・干渉耐性向上・セキュアな通信手段 |
| CRA(相関解析法)による地震前兆現象検出 | 時系列データから前兆的相関を検出するアルゴリズム | 短期地震予知の実装、早期防災措置の検討 |
国際連携の強化とICRワークショップの再構築
発表には、フォーラムが国際的なネットワーク化のハブとして機能することを目指す旨が明記されています。国際的に散発的に行われていたカオス研究活動を世界レベルでつなぎ、共同研究や標準化活動を活発化させる計画です。
その一環として、2008年から開催していた国際ワークショップInternational Chaos Revolution(ICR)を再構築し、ICR2008(東京)、ICR2009(バリ)、ICR2011(デポック)、ICR2013(ジャカルタ)の開催実績を踏まえ、2026年以降にこれらの国際会議を再度開催する予定であると明示されています。
ICR過去実績と今後の方針
過去のICR開催実績は、ICR2008(東京)、ICR2009(バリ)、ICR2011(デポック)、ICR2013(ジャカルタ)です。フォーラムはこれらの実績を土台に、2026年以降に国際ワークショップを再度開催する計画を示しています。
国際標準化にも言及されており、業界標準だけでなく国際的なデジュール標準(例:ITU=国際電気通信連合)に基づく標準化や、国際共同研究、データ共有ネットワークの整備を通じて、研究のグローバルな実装環境を整備する狙いが示されています。
- ICRの再構築と2026年以降の国際会議開催
- 国際標準(ITU等)を視野に入れた標準化活動
- 世界的ネットワークのハブ化による研究情報・データの共有
組織体制、開催概要、社会実装に向けた行動計画
京都大学大学院情報学研究科物理統計学分野は、教員3名(梅野、上原、小池)、研究員2名、スタッフ3名、学生(博士課程、修士課程、工学部情報学科数理工学コースB4)から構成される組織です。フォーラム設立に当たっては、これらの人的資源を基盤に、産官学連携を実現するためのネットワーク構築を行うと明記されています。
組織的には、基礎研究から社会実装へとつなげるための研究所設立を視野に入れた体制構築を進めることが記されています。これには、共同研究、実証試験、インターンシップ、共同プロジェクト、データ共有など具体的な連携手段が含まれます。
具体的な活動項目と連携先
フォーラムの設立趣旨に基づき、従来各組織で個別に行われていたカオス研究を一堂に会して行うため、以下のような活動を想定しています。
これらの取り組みは、産(創造)・学(研究・教育)だけでなく地方自治体や国とも連携し、特に短期地震予知技術の早期社会実装に向けた協働体制を作る点が強調されています。
- 共同研究と実証試験の実施(フィールドテストを含む)
- インターンシップや人材育成プログラムの実施
- データ共有基盤の構築と共同プロジェクトの推進
- 国際標準化や業界標準の推進(ITU等との連携も視野)
- 受賞発表の場としての活用(日本応用数理学会応用カオス研究部門 上田賞等)
また、発表文では日本応用数理学会応用カオス研究部会において受賞した応用カオス研究部門の上田賞などの表彰を、応用カオスフォーラムの場で行う旨が明記されています。これは研究成果の可視化と産業界等への周知を促進する役割を担うとされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2025年8月25日 00時00分 |
| 発表機関 | 京都大学大学院情報学研究科物理統計学分野 |
| 議長(PI) | 梅野健(梅野健教授) |
| 主要研究テーマ | データサイエンス、超一般化CLT、カオスCDMA、CRAによる地震前兆検出等 |
| 組織構成 | 教員3名(梅野、上原、小池)、研究員2名、スタッフ3名、学生(博士・修士・B4) |
| 国際活動 | ICR(International Chaos Revolution)の再構築、2026年以降の再開催計画 |
| 社会実装の焦点 | 短期地震予知技術の早期社会実装、地方自治体・国との連携 |
| 表彰 | 日本応用数理学会応用カオス研究部門の上田賞等の発表予定 |
以上のように、第一回応用カオスフォーラムの発表は、京都大学大学院情報学研究科物理統計学分野が長年培ってきたカオス理論とデータサイエンスの研究基盤を活用し、産官学が連携して技術を社会実装へつなげるための具体的な方針と活動計画を示したものです。特に短期地震予知技術に関する取り組みは人命に関わる重要な課題であり、地方自治体や国と連携した実証試験や制度面での調整も視野に入れた包括的なアプローチが示されています。