CDCピッチ#4レポ:デザイン×ものづくりの挑戦を追う

CDCピッチ第4回レポ

開催日:9月4日

CDCピッチ第4回レポ
このイベントで具体的に何が見られるの?
廃棄繊維を色で分別したベンチ、子ども向けと連動するスマート回収箱、古紙の組立展示台、燕三条製のチタン椅子など、4社のプロダクト開発と万博での実装が見られます。
第5回ピッチはいつどこで見られるの?
第5回は2025年9月22日13:30開演(終演16:00予定)、大阪・関西万博フューチャーライフヴィレッジTEステージで開催。参加自体は無料だが会場入場には万博チケットが必要です。

デザインとものづくりが出会う場――Co-Design Challenge Pitch #4の全容

2025年9月4日(木)、大阪・関西万博のフューチャーライフヴィレッジ(FLV)にて「Co-Design Challenge Pitch #4 ― デザイン × ものづくりで日本の新しい価値を世界に広げる これからの日本のくらしをつくる22の挑戦 ―」が実施されました。本記事は、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(大阪市住之江区、事務総長:石毛博行)が展開するCo-Design Challenge(以下、CDC)プログラムの第4回ピッチの模様を、登壇者の発表内容とともに詳細にまとめたものです。

本イベントのナビゲーターは小西利行氏と倉本仁氏。株式会社colourloop、カナデビア株式会社、一般社団法人サスティナブルジェネレーション、株式会社ドッツアンドラインズの4事業者が登壇し、それぞれの社会課題認識、プロダクト開発の手法、万博での実装と今後の取り組みを発表しました。CDCは2022年から展開されており、第1弾(CDC2023)ではモノの開発、第2弾(CDC2024)では生産現場公開やオープンファクトリーによる地域誘客の取り組みも加わっています。会場で触れられるプロダクトは、万博会期中(2025年4月13日~10月13日)に22プロジェクトとして実装されています。

「Co-Design Challenge Pitch #4」イベントレポート「デザイン × ものづくりで日本の新しい価値を世界に広げる」――これからの日本のくらしをつくる22の挑戦―― 画像 2

登壇4事業者の挑戦とプロダクトの中身

以下では、各社が提示した社会課題、開発したプロダクトの技術的特徴や具体的運用、万博での実装状況までを詳述します。各社の発表は、単なる作品紹介にとどまらず、材料や工程、地域との協働、量産・再利用を視野に入れた設計思想が共通していました。

発表内容は、素材の起点・加工手法・組み立てや耐久性などの技術的ポイントと、来場者に届けるためのデザインや体験設計という二軸で説明されました。

「Co-Design Challenge Pitch #4」イベントレポート「デザイン × ものづくりで日本の新しい価値を世界に広げる」――これからの日本のくらしをつくる22の挑戦―― 画像 3

株式会社colourloop:色で分別する繊維リサイクルとベンチの実装

京都工芸繊維大学発のベンチャー、株式会社colourloop(CEO 内丸もと子氏)は廃棄繊維の色分別による循環システムを紹介しました。廃棄繊維は世界で年間9,200万トン、日本で約200万トンに上り、リサイクル率は20~30%という現状を示したうえで、混紡・混織による分類の困難さがリサイクルを妨げている点を指摘しました。

colourloopは「色」をキーに廃棄繊維を数値化して分別する手法を確立し、再利用用途を広げています。CDCでは家具デザインのabode、繊維提供のナカノと協働し、廃棄衣料由来のベンチを開発。京都の家具職人が手作業で仕上げたそのベンチは、実用性・耐久性・座り心地に配慮した設計で、会場の展示ベンチにはTシャツ換算で約3,000枚分(1枚100グラム換算)の廃棄衣料が投入されています。

課題
廃棄繊維の混紡化での分類困難、低リサイクル率
技術
色による分別の数値化・アップサイクル
実装
廃棄衣料由来ベンチ(職人手仕上げ、Tシャツ約3,000枚相当)
「Co-Design Challenge Pitch #4」イベントレポート「デザイン × ものづくりで日本の新しい価値を世界に広げる」――これからの日本のくらしをつくる22の挑戦―― 画像 4

カナデビア株式会社:スマート回収箱と子ども向けアプリで資源循環を学ぶ

カナデビア(旧:日立造船、2024年10月に社名変更)は、小田切宏氏が登壇し、個人の分別行動を促す仕組みとして「スマート回収箱」と「スマートフォンアプリ(子ども向け)」の連携プロジェクトを発表しました。対象は主にフードトラックなどで使用されるたい肥化可能な食器類で、回収箱は天井部に設置した高さセンサーで内容物の高さを計測し、設定値を超えた際に事業者へ通知メールを発信する仕組みを備えています。

アプリは「しまじろうとSDGsを考える。」を題材にした子ども向けの4つのゲームを通じて資源循環を学ぶ構成。プロジェクトには大栄環境、大栄環境総研、カナデビアが参加し、デザインとユーザー導線、アクセス向上の課題に取り組みながら継続的に改良中であることが示されました。

  • スマート回収箱:高さセンサー→通知機能(事業者へ)
  • スマホアプリ:子ども向け4ゲームで資源循環を学習
  • 参加組織:大栄環境、大栄環境総研、カナデビア
「Co-Design Challenge Pitch #4」イベントレポート「デザイン × ものづくりで日本の新しい価値を世界に広げる」――これからの日本のくらしをつくる22の挑戦―― 画像 5

一般社団法人サスティナブルジェネレーション:古紙から生まれる展示台

奈良県の若手経営者らによる一般社団法人サスティナブルジェネレーションは、株式会社高木包装の髙木美香氏が代表として登壇。強化段ボールを用いた組み立て式展示台を紹介しました。1台あたり100個のパーツをカットして組み上げる設計で、プラスチックや金属を用いずにリサイクル可能な構造を実現しています。

展示台は曲線設計が可能で強度も確保され、総重量は約25キロ。フューチャーライフヴィレッジ内に14台が設置され、様々な団体による未来の暮らし提案の発信に利用されています。高木包装は年間で甲子園球場100個分相当の段ボールケースを生産しており、段ボールを輸送容器としてだけでなく付加価値のある製品として発信する狙いを示しました。

  1. 素材:古紙由来の強化段ボール
  2. 構造:100個のパーツを組立てる方式(プラスチック・金属不使用)
  3. 実装:FLV内に14台設置、総重量約25kg
「Co-Design Challenge Pitch #4」イベントレポート「デザイン × ものづくりで日本の新しい価値を世界に広げる」――これからの日本のくらしをつくる22の挑戦―― 画像 6

株式会社ドッツアンドラインズ:燕三条の技術で作るチタン椅子(歩留まり99%)

新潟・燕三条の産業分業体制を活かした株式会社ドッツアンドラインズ(代表 齋藤和也氏)は、「一枚板から作る歩留まり99%の椅子」を発表しました。材料、板金、溶接など8社が分業で参加し、JR東日本と連携して制作したチタン製の椅子はTEステージに設置されています。

開発の要点は「折り紙発想×一枚板構造」。レーザー加工で小さな穴に折れ線を付け、手で曲げて溶接、塗装をせずに金属表面の色付けを行う「酸化発色」を経て鏡面磨きで仕上げます。現在は工程でわずかな廃棄が出るため歩留まりは99%ですが、万博後も100%を目指した改善に取り組む意向でした。

地域
燕三条(新潟)
技術
レーザー折れ線加工、溶接、酸化発色、鏡面磨き
課題解決の観点
廃棄を減らす発想(出さないための設計)、地域産業観光との連携
「Co-Design Challenge Pitch #4」イベントレポート「デザイン × ものづくりで日本の新しい価値を世界に広げる」――これからの日本のくらしをつくる22の挑戦―― 画像 7

共創の手応えと次回(第5回)の案内

ピッチ終了後、登壇者とナビゲーターによる対話では「共創による学び」と「社会実装の重要性」が強調されました。髙木氏は単独では生まれない価値を指摘し、齋藤氏は製作に留まらない社会課題解決への発展を訴えました。小田切氏はデザイン視点の重要性に触れ、内丸氏は再生素材を主役にしたいと述べています。

小西氏と倉本氏はCDCの機能を社会実験の場として評価し、登壇した4社はそれぞれ今後の方針を示しました。内丸氏は「再生素材が主役になる社会」、小田切氏は「資源循環に貢献する企業へ」、髙木氏は「ものづくりの力を発信し地域創生へ」、齋藤氏は「燕三条を世界一のものづくりのまちにする」と表明しています。

「Co-Design Challenge Pitch #4」イベントレポート「デザイン × ものづくりで日本の新しい価値を世界に広げる」――これからの日本のくらしをつくる22の挑戦―― 画像 8

第5回Co-Design Challenge Pitchの予定

CDCピッチは全5回の開催を予定しており、最終回である第5回は2025年9月22日(月)に開催されます。開演13時30分、終演16時(予定)、会場は大阪・関西万博 フューチャーライフヴィレッジ TEステージ棟です。ナビゲーターは齋藤精一氏と矢島進二氏が務めます。

第5回の登壇事業者は以下の予定です。コクヨ株式会社、&SPACE PROJECT、株式会社友安製作所。それぞれの概要は次の通りです。

  • コクヨ株式会社:国産材・地域材活用の木製ベンチ(協力:VUILD、伊丹市、河内長野市、四万十町)
  • &SPACE PROJECT(ADDReC株式会社主体):宇宙ロケット廃材をアップサイクルした『宇宙タンクベンチ』
  • 株式会社友安製作所:端材と廃材を活用した中庭スツールとテーブル(地域のものづくり体験を伴う)

本イベント自体への参加は無料で予約不要・入退場自由ですが、万博会場への入場には大阪・関西万博のチケットが必要です。公式のCo-Design Challengeページは以下です。

https://www.expo2025.or.jp/co-creation-index/co-design-challenge/

「Co-Design Challenge Pitch #4」イベントレポート「デザイン × ものづくりで日本の新しい価値を世界に広げる」――これからの日本のくらしをつくる22の挑戦―― 画像 9

今回の要点整理(表形式)

以下に、本記事で取り上げた主要事項を表で整理します。各項目を比較できるようにまとめています。

項目 内容
イベント名 Co-Design Challenge Pitch #4 ― デザイン × ものづくりで日本の新しい価値を世界に広げる
実施日(発表) 発表:2025年9月9日 14時00分(プレスリリース)/イベント開催日:2025年9月4日
会場 大阪・関西万博 フューチャーライフヴィレッジ(FLV)、TEステージ棟等
主催 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(事務総長:石毛博行)
ナビゲーター(#4) 小西利行、倉本仁
登壇事業者(#4) 株式会社colourloop、カナデビア株式会社、一般社団法人サスティナブルジェネレーション、株式会社ドッツアンドラインズ
主なプロダクト・特徴
  • colourloop:色分別による繊維リサイクル、廃衣料由来ベンチ(Tシャツ約3,000枚相当)
  • カナデビア:スマート回収箱(高さセンサー+通知)、子ども向け学習アプリ(4ゲーム)
  • サスティナブルジェネレーション:古紙由来強化段ボールの展示台(1台100パーツ、14台設置)
  • ドッツアンドラインズ:チタン製椅子(折り紙発想×一枚板構造、歩留まり99%)
CDCの位置づけ 万博を契機に日本のくらし(まち)を再考し、共創により新たなモノを実装するプログラム(CDC2023/CDC2024経緯含む)
会期中の実装 22プロジェクトが万博会場に実装され、来場者が触れることが可能(展示台2台はFLVに常設予定)
第5回開催予定 2025年9月22日(月)13:30開演(終演16:00予定)、ナビゲーター:齋藤精一、矢島進二、登壇:コクヨ、&SPACE PROJECT、友安製作所
公式情報 https://www.expo2025.or.jp/co-creation-index/co-design-challenge/

以上がCo-Design Challenge Pitch #4の主要な発表と議論の整理です。今回示された技術やデザインの視点は、廃棄物の扱い、素材の再定義、地域産業との連携といった観点で共通するテーマを持ち、万博という場での社会実験としてその手応えと課題が提示されました。第5回ピッチではさらに多彩なプロジェクトが予定されており、引き続き会場での実装状況と社会実装の進展が注目されます。

参考リンク: