9/15発表|メナード 香りの高級感が時間感覚と肌を変える
ベストカレンダー編集部
2025年9月11日 12:41
高級感香りで時間変化
開催期間:9月15日〜9月18日

香りの「高級感」が時間の感じ方を変える——メナードの調査結果
日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川 純一)は、時間の感じ方(主観的な時間の長さ)に影響を与える香りの特徴を体系的に調査し、「高級感」を感じる香りが時間の流れを早く感じさせることを明らかにしました。今回の調査結果は2025年9月11日付の研究発表として公表され、同年9月15日から18日にかけてフランス・カンヌで開催される第35回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)学術大会で発表されます。
調査の背景には、同じ長さの時間でも個人の興味や感情によって時間の感じ方が変わるという既知の現象があります。香りは感情や注意を変化させることで時間の知覚に影響を与える可能性が指摘されていましたが、香りのどのような特徴がどのように影響するかは十分に明らかになっていませんでした。本研究はそのギャップを埋めることを目的に実施されています。

調査の概要と主な知見
本調査では、まず印象の異なる天然香料8種類を用いて、被験者がどのように時間を感じるかを計測しました。被験者が「30秒が経過した」と感じた瞬間にストップウォッチを止めてもらう方式で主観的時間長の評価を行い、実際の30秒と比較することで時間の感じ方の変化を定量化しました。
評価に用いた印象項目は18項目にわたり「心地よい」「わくわくした」「上品な」などを6段階評価で回答してもらい、因子分析を用いて香りの印象を「心地よさ」「魅力感」「爽快感」「高級感」という4つの因子に分類しました。さらにPLS分析(偏最小二乗回帰分析)を用いて、これら4因子が評価時間に与える影響を解析した結果、「高級感」因子が評価時間をもっとも強く延長させる(=被験者が時間の流れを早く感じる)ことが示されました。
- 対象:女性17名(20代~50代)
- 香料:天然香料8種類
- 主観時間評価法:被験者が30秒経過と感じたタイミングでストップ
- 印象評価:18項目を6段階で評価 → 因子分析で4因子抽出
- 解析手法:因子分析、PLS分析(偏最小二乗回帰)
- ※1 因子分析
- 多数の回答項目から共通する特徴(因子)を抽出する統計手法。今回では18項目を4つの因子に分類した。
- ※2 PLS分析法(偏最小二乗回帰分析法)
- 複数の説明変数が目的変数に与える影響を評価する手法。説明変数の影響度合いは標準化偏回帰係数で示される。

脳計測が示す「時間感覚」と高級感の関係
香りの主観的効果を裏付けるための脳活動測定が行われ、ここでも高級感のある香りが時間の感覚に関与する脳領域の活動を抑制することが示されました。香料開発担当の2名が選定した「多くの人に高級な印象を与える」と考えられる調合香料を用いて、香りあり・なしの条件で比較実験を実施しました。
対象は女性16名(20代~50代)で、主観時間評価は先述と同一の30秒計測方式を採用しました。香りがある条件では評価時間が香りがない条件に比べて長く(被験者は30秒を長く感じる)、すなわち時間の流れを早く感じる結果が得られました。

fNIRSによる右前頭前野の変化
脳活動の可視化にはfNIRS(functional Near-Infrared Spectroscopy;機能的近赤外分光法)を使用しました。fNIRSは近赤外光を用いて脳内の血中ヘモグロビン濃度の変化を捉え、脳活動を間接的に評価する手法です。
計測の結果、時間の感覚に関与するとされる右前頭前野の活動は、香りがない条件では活性化されていたのに対し、香りを嗅いだ条件ではその活性化が抑制されていました。このことは、高級感のある香りが脳の時間感覚に関わる領域の活動を抑えることで、主観的に時間の感覚を変化させている可能性を示します。
- ※3 fNIRS(機能的近赤外分光法)
- 近赤外光を用いて脳活動と連動する血中ヘモグロビン濃度の変化を解析し、脳活動の指標をとらえる手法。

スキンケア実験:香りが化粧水の使用行動と肌の明るさに与える影響
次に、高級感のある香りがスキンケア行動自体に与える影響を検証するため、化粧水の使用実験が行われました。ここでは、香りをつけた化粧水と無香の化粧水で使用時間と肌の明るさの変化を比較しました。
対象は女性14名(20代~50代)で、使用時間の測定はコットンになじませた化粧水を顔全体に塗布するのにかかる時間を計測しました(※4)。その結果、香りをつけた化粧水の方が使用時間が長く、使用前後で測定した肌の明るさも香りつき化粧水のほうが向上していました。これらのデータから、香りがスキンケアをより丁寧に行わせる行動変容を促し、その結果としてスキンケア効果の向上につながる可能性が示唆されます。
- ※4 使用時間の定義
- 化粧水をコットンになじませた状態で顔全体に塗布するのにかかる時間を計測。
化粧水実験における主要観察点は以下の通りです。
- 対象:女性14名(20代~50代)
- 条件:高級感のある香りをつけた化粧水 vs 香りのない化粧水
- 計測項目:化粧水の使用時間(塗布にかかる時間)、使用前後の肌の明るさ
- 結果:香りつき化粧水で使用時間が長く、使用後の肌の明るさが向上

研究の手法、結果の整理と今後の学術発表
本研究は、多段階の実験設計で香りの心理的・生理的影響を評価しています。主観評価(時間感覚と印象評価)、統計解析(因子分析、PLS分析)、脳活動計測(fNIRS)、実行行動と生理的指標(化粧水の使用時間と肌の明るさ)を組み合わせた総合的なアプローチにより、香りの「高級感」が時間感覚と行動に与える影響を多面的に明らかにしています。
これらの成果は、2025年9月15日から18日にフランス・カンヌで開催される第35回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)学術大会で発表される予定です。学術大会での発表を通じて、香りがもたらす心理的効果と化粧品開発への応用可能性が国際的に紹介されることになります。
項目 | 内容 |
---|---|
発表元 | 日本メナード化粧品株式会社 総合研究所(代表取締役社長:野々川 純一) |
研究公表日 | 2025年9月11日 10時30分 |
学会発表 | 第35回IFSCC学術大会(2025年9月15日〜18日、フランス・カンヌ) |
主な研究テーマ | 香り(高級感)が時間の感じ方、脳活動、スキンケア行動に与える影響 |
被験者数・対象 | 第1実験:17名(20代〜50代)/第2実験:16名(20代〜50代)/化粧水実験:14名(20代〜50代) |
測定方法 | 主観的時間評価(30秒感覚のストップ)、印象評価18項目(6段階)、因子分析、PLS分析、fNIRS脳活動計測、化粧水使用時間測定、肌の明るさ測定 |
主要結果 | 「高級感」を感じる香りは評価時間を長くさせる(時間を早く感じさせる)。高級感のある香りは右前頭前野の活動を抑制。香りつき化粧水は使用時間を延ばし、使用後の肌の明るさを向上させた。 |
以上が今回の研究成果の整理です。調査手法、被験者構成、解析手法、主要所見、発表予定までを網羅的に示しました。香りの印象が時間感覚や行動に与える影響は、化粧品の使用体験設計や香料開発にとって重要な示唆を含んでいます。