11/28開幕 稲積陽菜、ディスクラビアで挑むリサイタル
ベストカレンダー編集部
2025年9月14日 05:55
ディスクラビア活用リサイタル
開催期間:11月28日〜1月25日

研究と演奏が交差する新たなリサイタルの試み
株式会社タクティカートは、ピアニスト稲積陽菜によるピアノリサイタル『伝統の継承、未知への探求-』の開催を2025年11月から2026年1月にかけて名古屋、仙台、東京、京都で実施すると発表した(リリース日:2025年9月13日 21:00)。本公演は単なる演奏発表にとどまらず、ヤマハの高精度自動演奏・記録システムDisklavier™︎(ディスクラビア)を活用し、稲積が進める演奏と感情の科学的研究と直結する形で企画されている。
稲積は桐朋学園大学音楽部門の特待生として在学し、日本音楽コンクールピアノ部門第2位、日本ショパンコンクール第1位など複数の受賞歴を持つ若手演奏家であり、ポーランドでのショパン国際ピアノコンクールへの挑戦経験もある。2026年4月より慶應義塾大学大学院へ進学し、研究テーマとして「奏者の感情的関与が聴衆の感情喚起に及ぼす影響」を掲げる。今回のリサイタルは、大学院での実証的研究で継続使用する予定のディスクラビアを、実演の場で初めて導入する試みであり、演奏と研究の接続点を示す最初の事例となる。

ディスクラビアの役割と研究への期待
ディスクラビアは鍵盤やペダル操作を高精度に記録・再現するシステムであり、演奏の物理的データ化が可能である。今回のリサイタルではヤマハの楽器協力のもと、稲積の演奏データを定量的に記録し、演奏表現と聴衆の反応との関係性を分析するための第一歩とする。
主催側は、聴衆を単なる観客ではなく研究協力者として位置づけ、演奏中の音響情報や生体反応等(公演要綱に基づく範囲)を含めた研究データの収集・解析へとつなげる方針を示している。京都公演についてはディスクラビアの稼働は行われない点が明記されているため、各会場での装置使用状況に差異がある点も含めた運営となる。

多層的なプログラム構成 — 稲積陽菜の選曲と演奏家としての挑戦
本リサイタルのテーマは「伝統の継承、未知への探求-」。プログラムは前半にバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンといった古典派・バロックの主要作品を据え、後半にはボルトキエヴィチ、リャードフ、モンポウ、レヴィツキなど、比較的知られていない作曲家の作品を並べることで、伝統と新奇の対比を明確にしている。
稲積は4歳からピアノを学び、数多くのコンクールで評価を受けてきた経歴を持つ。今回の選曲は演奏家としての技量と解釈力を示すと同時に、聴衆とともに音楽の多層性を探る意図が反映されている。演奏者としての熟達と研究者としての観察が交差する場として構成されたプログラムは、同一演奏者が異なる時代・作風を横断することで、聴衆に多面的な聴取経験を提供する。
プログラムの詳細(2種類)
本公演では会場により2つのプログラム(AとB)を用意し、同時並行で展開する。各プログラムは共通する曲目を持ちつつも後半の選曲が異なり、それぞれ異なる感性と技術的要求を提示する。
- プログラムA
- J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV 971
- モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第18番 KV576
- ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22
- 休憩
- ラヴェル:ボロディン風に,シャブリエ風に M.63
- アルベニス:《イベリア》第2巻より 第6曲「トュリアーナ」
- ボルトキエヴィチ:リリカ・ノーヴァ Op.59
- リャードフ:小さなワルツ Op.26
- スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2番 嬰ト短調 「幻想ソナタ」
- プログラムB
- J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV 971
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第28番 イ長調 Op.101
- 休憩
- モンポウ:郊外
- アルベニス:《イベリア》第2巻より 第6曲「トュリアーナ」
- M.レヴィツキ:アラベスク・ヴァルサンテ Op.6
- リャードフ:小さなワルツ Op.26
- スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2番 嬰ト短調 「幻想ソナタ」Op.19
上記の通り、両プログラムともにバッハ=イタリア協奏曲やスクリャービンの「幻想ソナタ」を含み、中心となる作品群を軸に前後で異なる音楽表現を提示する形となっている。アルベニスの「トュリアーナ」は両プログラム共通曲目として配置されている。
公演スケジュール、会場、チケット情報
公演は京都、名古屋、仙台、東京の4都市で行われる。名古屋・仙台公演はヤマハのサロンに限定40席という小規模で実施され、ディスクラビアの設置・稼働は名古屋、仙台、東京の各会場にて行う(京都公演はディスクラビア稼働なし)。座席形式や開演時間は会場ごとに異なるため、来場を検討する際は以下の各日程を確認することが必要である。
チケットは特別席と一般席の2種が設定され、先行販売と一般販売の日程が明確に定められている。プレイガイドはイープラスを中心に、京都と東京公演についてはteketでも取り扱いがある。
各公演の日時と会場
- 京都公演:2025年11月28日(金) 18:15開場/19:00開演、青山音楽記念館バロックザール。※本公演ではディスクラビアの稼働はありません。
- 名古屋公演:2025年12月21日(日) 14:30開場/15:00開演、ヤマハグランドピアノサロン名古屋(ヤマハミュージック名古屋店4階)。40席限定。
- 仙台公演:2026年1月11日(日) 14:30開場/15:00開演、ヤマハ仙台サロン(ヤマハミュージック仙台店6階)。40席限定。
- 東京公演:2026年1月25日(日) 18:15開場/19:00開演、浜離宮朝日ホール。
チケット料金・販売スケジュール・窓口
チケット価格は以下の通り。特別席は全公演共通の限定席で、この取り組みを応援する性質の座席となる。
- 特別席
- ¥10,000(全公演 共通・限定席)
- 一般席
- ¥3,500
販売スケジュールと主なプレイガイドは次の通りである。先行販売はイープラスのみの取り扱いで期間が限定されている点に注意が必要だ。
- 先行販売(イープラスのみ):2025/09/13 21:00〜2025/09/30 23:59。
https://eplus.jp/inazumi_hina/ - 一般販売:2025/10/10 11:00〜(イープラスほか)
- teket販売(京都・東京のみ):
- 京都公演:https://teket.jp/5288/55915
- 東京公演:https://teket.jp/5288/55916
- teketでの一般販売開始:2025/10/10 11:00〜
稲積陽菜の背景と、この公演が示す意味
稲積陽菜は幼少よりピアノを学び、桐朋学園での特待生在籍や国内外のコンクールでの顕著な成績を通じて演奏活動の場を広げてきた。今回のリサイタルは演奏家としての表現を示す場であると同時に、大学院での研究へ向けた実証的なステップでもある。
稲積が掲げる研究テーマである「奏者の感情的関与が聴衆の感情喚起に及ぼす影響」は、演奏という行為を単に音響的・技術的な側面から捉えるだけではなく、演奏者と聴衆が共有する情動の伝播過程を科学的に解明しようとするものだ。本リサイタルではディスクラビアを用いたデータ収集が行われ、今後の大学院研究への基礎データとなる。
公演運営は、稲積の演奏的決意と研究的関心とを両立させる構成で整理されており、聴衆は伝統的なレパートリーと未知の作品群を同一の演奏者から体験することで、演奏表現の多様性とその伝播の可能性を感じ取ることができる。
以下に本記事で取り上げた公演の主要事項を整理した表を示す。公演日程、会場、ディスクラビアの稼働有無、座席形式、チケット・販売情報、問い合わせ先まで網羅している。
項目 | 内容 |
---|---|
主催・発表 | 株式会社タクティカート(発表日時:2025年9月13日 21:00) |
演奏者 | 稲積陽菜(ピアノ) ©︎AyaneShindo |
研究テーマ | 「奏者の感情的関与が聴衆の感情喚起に及ぼす影響」/慶應義塾大学大学院進学(2026年4月より) |
使用機材 | ヤマハ Disklavier™︎(ディスクラビア):名古屋・仙台・東京に搬入・設置。京都は稼働なし。 |
公演日程・会場 | 京都:2025/11/28(金)青山音楽記念館バロックザール(18:15開場/19:00開演) 名古屋:2025/12/21(日)ヤマハグランドピアノサロン名古屋(14:30開場/15:00開演、40席限定) 仙台:2026/01/11(日)ヤマハ仙台サロン(14:30開場/15:00開演、40席限定) 東京:2026/01/25(日)浜離宮朝日ホール(18:15開場/19:00開演) |
チケット | 特別席 ¥10,000(限定席/全公演)、一般席 ¥3,500 |
販売スケジュール | 先行(イープラスのみ):2025/09/13 21:00〜2025/09/30 23:59/一般販売:2025/10/10 11:00〜 |
プレイガイド | イープラス:https://eplus.jp/inazumi_hina/ teket(京都・東京のみ):京都 https://teket.jp/5288/55915 / 東京 https://teket.jp/5288/55916 |
問い合わせ | 株式会社タクティカート Mail: concert@tacticart.co.jp / TEL: 03-5579-6704 |
プログラム(代表) | プログラムA、プログラムB(J.S.バッハ:イタリア協奏曲 BWV 971、スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2番「幻想ソナタ」ほか) |