ニッピ、cyclo(X-Hyp)が光老化抑制と高い皮膚透過性を確認

cyclo(X-Hyp)光老化抑制

開催日:9月25日

cyclo(X-Hyp)光老化抑制
cyclo(X-Hyp)って何?
コラーゲン由来の環状ジペプチドで、Hyp(ヒドロキシプロリン)含有のcyclo(X‑Hyp)はin vitroでUVB誘導のROSを消去し、炎症経路やMMPを抑制してIV型コラーゲンを回復した研究分子です。
これって今すぐ化粧品で使えるの?
まだ即商品化とは言えません。本研究は主にin vitroと皮膚透過性試験に基づく結果で、人での安全性・有効性確認や製剤化・臨床試験など追加検証が必要です。

コラーゲン由来の環状ジペプチドに着目した研究の背景と目的

株式会社ニッピは2025年9月25日付の発表で、コラーゲン由来のヒドロキシプロリン(Hyp)含有環状ジペプチド「cyclo(X-Hyp)」が、紫外線による光老化の主要因である活性酸素種(ROS)や炎症シグナルを有意に抑制することを明らかにしたと報告しました。本研究はヒト皮膚表皮細胞を用いたin vitro実験に基づいており、研究成果は2025年8月24日に国際学術誌『Photochemistry and Photobiology』にオンライン掲載されています(Kumazawa Y, Mizuno K, Taga Y. DOI: https://doi.org/10.1111/php.70026)。

光老化は長期の紫外線(特にUVB)曝露により生じる肌の変化で、シワ、たるみ、乾燥といった外観の変化に加え、皮膚恒常性の破綻を伴います。本研究の出発点は、コラーゲンに豊富に含まれるヒドロキシプロリン(Hyp)を持つ環状ジペプチドが、どのように光老化関連の分子イベントに影響を与えるかを解明することでした。

コラーゲン由来環状ジペプチド「cyclo(X-Hyp)」の高い光老化抑制作用と皮膚透過性を確認 画像 2

研究の位置づけとこれまでの知見

研究チームはこれまでに、生姜酵素を用いてコラーゲンを分解するとトリペプチドX-Hyp-Glyが多量に生成され、加熱によりこれが環状ジペプチドcyclo(X-Hyp)へ高効率に変換されることを示してきました。過去の報告ではHyp含有ペプチドが高い生理活性を示すことが示唆されています。今回の研究は、これらの知見を踏まえ、光老化抑制能と皮膚透過性の両面を評価する点に特徴があります。

参考文献として、Borthwick & Da Costa(Crit Rev Food Sci Nutr, 2017)、Sato(J Agric Food Chem, 2018)、およびTagaらのこれまでの研究(J Agric Food Chem, 2016・2017)が挙げられています。企業の関連情報は当社ウェブサイトにも掲載されています。

コラーゲン由来環状ジペプチド「cyclo(X-Hyp)」の高い光老化抑制作用と皮膚透過性を確認 画像 3

主要な実験結果:ROS抑制と炎症・MMP活性の抑制

本研究ではヒト皮膚表皮細胞(epidermal keratinocytes)にUVBを照射して光老化モデルを作成し、各種cyclo(X-Hyp)を添加して評価を行いました。結果として、すべてのcyclo(X-Hyp)がUVB照射により増加した細胞内ROSを減少させることが確認され、強いROS消去能が示されました。統計解析ではDunnett’s testにおいて有意差が認められています(UVB照射コントロール=100%; *P < 0.01)。

また、cyclo(X-Hyp)はROSによって誘導される炎症性シグナル経路であるMAPKおよびNF-κBの活性化を抑制しました。これにより炎症関連遺伝子の発現が低下し、続いてマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-2、MMP-9)の活性化も抑制されました。これらは光老化の進行に直接関与する因子です。

コラーゲン由来環状ジペプチド「cyclo(X-Hyp)」の高い光老化抑制作用と皮膚透過性を確認 画像 4

IV型コラーゲン量の回復

UVB照射により低下した細胞内のIV型コラーゲン量に対して、cyclo(X-Hyp)を添加するとIV型コラーゲン量が回復しました。この結果は、光老化に伴う基底膜中のIV型コラーゲンの過度な分解を抑制する可能性を示しています。図の解析では有意差が示されており(Dunnett’s test, *P < 0.01 及び *P < 0.001)、生物学的意義が支持されています。

比較対象として用いられた対応する鎖状ジペプチドX-HypおよびPro含有環状ジペプチドcyclo(X-Pro)と比べ、cyclo(X-Hyp)の効果は優れていました。このことは、ペプチドの環状化とProの水酸化(Hyp化)が相乗的に生理活性へ寄与していることを示唆します。

皮膚透過性試験と材料特性、応用の可能性

本研究ではヒト皮膚組織を用いた透過性試験も実施しています。その結果、cyclo(X-Hyp)は対応するX-Hypよりも効率的に皮膚を透過し、24時間後には塗布量の7~10%が透過していることが示されました。統計的にはStudent’s t-testで有意差が確認されています(*P < 0.01)。

この高い皮膚透過性は、cyclo(X-Hyp)の環状構造に由来する高い疎水性と、酵素分解耐性の高さによるものと考えられます。環状化により分子が安定化され、皮膚バリアを越えて到達しやすくなる一方で、体外酵素による分解を受けにくくなるため、塗布型の化粧品原料や局所応用型の素材として有利です。

化粧品・健康食品への応用観点

研究結果はcyclo(X-Hyp)が光老化の主要因であるROSの消去、炎症シグナルおよびMMPの抑制、IV型コラーゲンの回復を達成した点で、化粧品原料としての利用価値を示します。加えて、塗布による効果発現が期待できる皮膚透過性の高さは、外用剤設計の観点からも重要です。

また、食品素材としての展開も想定されますが、本研究はin vitroおよび皮膚透過性試験に基づく結果であるため、ヒトでの安全性・有効性を確立するためには追加試験が必要です。関連する過去の知見として、既存の論文や当社の研究成果が報告されています。

論文情報、関連情報、お問い合わせ

本研究の詳細は以下の論文に記載されています。掲載誌とオンライン公開日、DOIを明記します。

  • 論文題目: Collagen-derived hydroxyproline-containing cyclic dipeptides prevent photoaging-related inflammatory response in UVB-irradiated epidermal keratinocytes.
  • 著者: Kumazawa Y, Mizuno K, Taga Y.
  • 掲載誌: Photochem Photobiol(オンライン掲載日: 2025年8月24日)
  • DOI: https://doi.org/10.1111/php.70026

研究や製品に関する問い合わせ先や関連リンクは以下の通りです。追加のデータやプレス素材は企業サイトで提供されています。

問い合わせ先
https://www.nippi-inc.co.jp/tabid/140/Default.aspx
企業サイト(関連リンク)
https://www.nippi-inc.co.jp
研究関連ページ
当社ウェブサイト「生姜酵素を用いた機能性コラーゲンペプチドの開発」

本記事の要点まとめ

以下の表は本プレスリリースで報告された主要な情報を整理したものです。研究目的、手法、主要結果、応用可能性、関連情報を一目で確認できます。

項目 内容
発表者 株式会社ニッピ(プレスリリース日: 2025年9月25日 10:00)
掲載論文 Photochem Photobiol(オンライン掲載日: 2025年8月24日) DOI: 10.1111/php.70026(Kumazawa Y, Mizuno K, Taga Y)
試験系 ヒト皮膚表皮細胞(epidermal keratinocytes)にUVB照射による光老化モデルを使用
被評価物質 コラーゲン由来環状ジペプチド cyclo(X-Hyp)(複数種)
主要な結果(分子レベル) ・UVBによる細胞内ROS増加を有意に抑制(Dunnett’s test, *P < 0.01)
・MAPK・NF-κBなど炎症性シグナルの抑制
・MMP-2、MMP-9の活性化抑制
・IV型コラーゲン量の回復(有意差あり)
皮膚透過性 ヒト皮膚組織試験で24時間後に塗布量の7~10%が透過(X-Hypより有意に高い、Student’s t-test, *P < 0.01)
効果メカニズムの示唆 環状化とProの水酸化(Hyp)が相乗的に機能し、環状構造による疎水性向上と酵素分解耐性により生体内での安定性と透過性が高まる
想定応用分野 外用化粧品原料、局所応用型素材、健康食品素材の候補
参考文献・関連情報 ※1 Borthwick & Da Costa, Crit Rev Food Sci Nutr, 2017
※2 Sato, J Agric Food Chem, 2018
※3,4 Taga et al., J Agric Food Chem, 2016, 2017
企業資料: https://www.nippi-inc.co.jp

本稿は発表内容を整理して伝えるものであり、実験は主にin vitroおよび皮膚透過性試験に基づいています。臨床での安全性・有効性を確認するためには追加の評価が必要となります。研究成果に関する詳細情報やプレス素材は上記の企業サイトおよび論文本文をご参照ください。

参考リンク: