成和化成、IFSCCでスキン・ヘア・サンケアの研究を3題発表

IFSCCで原料3題発表

開催期間:9月15日〜9月18日

IFSCCで原料3題発表
どんな研究が発表されたの?
スキンケアはBCO1とiVC 3LGAによる表皮老化抑制、ヘアケアはトシルバリンNaでキューティクル剥離抑制、サンケアはSilasomaカプセルで固体UV吸収剤の高配合化を目指す3題です。
これって市販品にいつ使われるの?
今回の発表は学会でのポスター報告で、製品化には処方最適化や安全性評価が必要。実用化・市販化には数ヶ月〜数年の追加検証期間が通常かかります。

カンヌで発表された三分野の研究:表皮・毛髪・サンケアにまたがる報告

化粧品原料の研究・製造を行う株式会社成和化成は、2025年9月15日から9月18日にフランス・カンヌで開催された国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)学術大会にて、スキンケア、ヘアケア、サンケアに関する研究成果をポスター形式で3題発表しました。大会はIFSCC Congress 2025として、会場はLe Palais des Festivals et des Congrès(カンヌ、フランス)で開催され、公式サイトは https://ifscc2025.com/en/ です。

本稿では、各ポスター発表の要旨と技術的意義、ならびに成和化成の企業情報と大会参加の背景を整理して報告します。発表は当社の研究員によって行われ、発表日時は大会会期中に掲示されたポスター形式での発表でした。プレスリリース公開日時は2025年9月25日10時00分です。

㈱成和化成 第35回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)学術大会において研究成果をポスターにて3題報告 画像 2

成和化成の発表全体概要

発表は以下の3題です。スキンケア領域では表皮内レチノール供給を支える酵素と表皮老化抑制、ヘアケア領域では従来のコーティングとは異なるキューティクル保護アプローチ、サンケア領域では固体紫外線吸収剤を高配合したカプセル化による処方改善についての報告が行われました。

同社は引き続き化粧品関連の研究を進め、新しい知見を世界に発信していく旨を公表しています。ここからは各発表の内容を詳細に取り上げます。

表皮老化抑制に関する新知見:BCO1とiVC 3LGAの関係

ポスター発表のタイトルは「Epidermal retinol prevents aging by protecting epidermal stem cells – The key role of BCO1 – 表皮レチノールは表皮幹細胞を守ることで皮膚老化を抑制する – BCO1の重要な役割 -」です。研究は表皮角化細胞に発現するβカロテン変換酵素(BCO1)が、表皮内でレチノールを生成・供給し、表皮老化の抑制に寄与する可能性を検討したものです。

研究では、BCO1によるレチノール供給が17型コラーゲン(COL17)の発現低下を抑制することが示され、BCO1とCOL17の関連が表皮老化メカニズムにおいて重要であることが示唆されました。さらに、ビタミンC誘導体であるiVC 3LGA(表示名:3-ラウリルグリセリルアスコルビン酸)には、紫外線(UVB)によって生じるBCO1の発現低下を防ぐ作用が確認されました。

主な実験的知見と解釈

発表されたデータは主に角化細胞におけるBCO1の発現解析、COL17の発現レベルの比較、及びUVB曝露後の酵素発現の変化を中心としています。これらの解析から、BCO1による内因性レチノールの供給は表皮幹細胞を保護し、COL17発現の保持を通じて表皮老化を抑制しうることが示されました。

また、iVC 3LGAはUVB照射によるBCO1発現の低下を抑えることが確認されており、外用成分としてiVC 3LGAが表皮老化の抑制に寄与する可能性が示唆されています。これらはレチノールの外用による効果に加えて、表皮内部での前駆体代謝を維持することで生理的な保護効果を生むことを示すものです。

  • 対象酵素:βカロテン変換酵素(BCO1)
  • 重要なタンパク質:17型コラーゲン(COL17)
  • 有効成分:iVC 3LGA(表示名称:3-ラウリルグリセリルアスコルビン酸)
  • 示唆される作用:BCO1の維持による内因性レチノール供給とCOL17の発現保持による表皮老化抑制

毛髪ケアの新たなアプローチ:トシルバリンNa(Aminoreact TsV)によるキューティクル剥離抑制

2題目のポスターは「Suppression of Cuticle Peeling by a Low Molecular Weight Amphiphilic Substance 低分子両親媒性物質によるキューティクル剥離の抑制」です。毛髪最外層のキューティクルがダメージで剥離するとバリア機能が低下し、内部損傷や枝毛の発生につながります。本研究は毛髪表面を単にコーティングする従来法とは異なるメカニズムでキューティクル剥離を防ぐ原料を評価したものです。

当該原料はAminoreact TsV(表示名称:トシルバリンNa)で、低分子量の両親媒性物質である点が特徴です。実験結果では、トシルバリンNaは毛髪表面をコーティングすることなくキューティクルの剥がれを抑え、枝毛発生を抑制することが確認されました。

技術的な特徴と利点

従来の表面コーティング型のケアは使用を繰り返すうちに表面蓄積が生じ、質感やツヤの低下などの副作用を招く可能性が指摘されています。トシルバリンNaは低分子であるため蓄積を起こさず、両親媒性という性質からキューティクルの結合状態や水分保持に作用して剥離を防ぐという異なるアプローチを採ります。

毛髪の物性維持や長期的な質感に影響を与えにくい点、及び枝毛発生の抑制効果が期待される点が本研究の意義です。ヘアケア処方への組み込みや、既存処方との併用に関する検討の余地も示されています。

原料名
Aminoreact TsV(表示名称:トシルバリンNa)
主な作用
キューティクル剥離の抑制、枝毛発生抑制(コーティングを伴わない)
期待される利点
蓄積による質感低下を回避できる処方設計への応用

サンケア処方の改良:Silasomaカプセル技術による固体紫外線吸収剤の高配合化

3題目のポスターは「Microcapsules with a high content of solid UV absorbers made in silk-silicone hybrid polymers facilitate O/W sunscreen formulations 固体紫外線吸収剤を高配合したシルク‐シリコーンハイブリッドポリマーからなるマイクロカプセルがO/Wサンスクリーン処方を容易にする」です。近年、紫外線吸収剤は規制やトレンドの影響で使用可能な種類が制限されることが増えており、特に固体の紫外線吸収剤は処方設計上の課題(溶解性、使用感)を伴います。

成和化成は既存のカプセル化技術Silasomaを応用し、固体紫外線吸収剤を高濃度で内包したマイクロカプセル原料を開発しました。報告では、このカプセル化原料を用いることでO/W(油中水型)サンスクリーン処方への配合が容易になり、感触改善、他の紫外線防御剤併用時のSPF向上、製剤の安定性向上が確認されたとまとめられています。

検証結果と処方上の効果

カプセル化により固体紫外線吸収剤の分散性と配合調和性が向上し、従来の固体配合に伴う溶解性やざらつきなどの課題を緩和する効果が示されました。さらに、シルク‐シリコーンハイブリッドポリマーを用いることで感触面の改善も得られ、使用感の向上が期待されます。

検討では、カプセル化原料を他の紫外線防御剤と併用することでSPFが上がる例や、カプセル化による成分の安定化によって製剤寿命が延長する可能性が示されています。これはサンスクリーン処方の設計自由度を高める技術的アプローチとなります。

  • 原料技術:Silasoma(カプセル化原料)
  • 目的:固体紫外線吸収剤の高配合化、O/W処方への適用性向上
  • 確認された効果:配合の容易化、感触向上、SPF向上、製剤安定性の向上

大会情報と企業概要、および発表内容の整理

大会はIFSCC Congress 2025(会期:2025年9月15日〜9月18日、会場:Le Palais des Festivals et des Congrès、カンヌ)で開催され、成和化成はスキンケア、ヘアケア、サンケアの3分野にわたりポスター発表を行いました。報告は全てポスター形式で提示され、企業からは研究員が出席して説明を行っています。

以下に、本記事で取り上げた発表と企業情報を表形式で整理します。続く段落では会社情報や問い合わせ先などの詳細を記載します。

分類 発表タイトル(英語/日本語) 要点 主要原料・技術
スキンケア Epidermal retinol prevents aging by protecting epidermal stem cells – The key role of BCO1 – / 表皮レチノールは表皮幹細胞を守ることで皮膚老化を抑制する – BCO1の重要な役割 – BCO1による表皮内レチノール供給がCOL17の低下を抑制し表皮老化の抑制に寄与。iVC 3LGAがUVBによるBCO1発現低下を防ぐ。 BCO1、COL17、iVC 3LGA(3-ラウリルグリセリルアスコルビン酸)
ヘアケア Suppression of Cuticle Peeling by a Low Molecular Weight Amphiphilic Substance / 低分子両親媒性物質によるキューティクル剥離の抑制 低分子両親媒性物質トシルバリンNaが毛髪をコーティングせずにキューティクル剥離を抑え、枝毛発生を抑制。 Aminoreact TsV(トシルバリンNa)
サンケア Microcapsules with a high content of solid UV absorbers made in silk-silicone hybrid polymers facilitate O/W sunscreen formulations / 固体紫外線吸収剤を高配合したシルク‐シリコーンハイブリッドポリマーからなるマイクロカプセルがO/Wサンスクリーン処方を容易にする 固体紫外線吸収剤を高配合で内包したカプセル化原料によりO/W処方の配合性・感触・SPF・安定性が改善。 Silasoma(シルク-シリコーンハイブリッドポリマーのマイクロカプセル)

会社概要は以下の通りです。会社名は株式会社成和化成、本社所在地は〒579-8004 大阪府東大阪市布市町1丁目2-14、代表取締役は吉岡正人、設立は昭和47年12月4日、URLは https://seiwakasei.jp/ です。事業内容は化粧品原料の研究開発・製造で、社員の約半数が研究に携わり、これまでに100種類を超えるオリジナル化粧品成分を開発してきました。

公式の情報発信先として、公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@SEIWA_KASEI)、iVC特設サイト(https://seiwakasei.jp/ivc/)、および美髪成分PPTのInstagram(https://www.instagram.com/pptbeauty_official/)があります。商標についてはiVC、AminoreactおよびSilasomaは株式会社成和化成の登録商標です。

お問い合わせ先は株式会社成和化成 広報・企画課、電話072-987-2626(受付時間 8:30〜17:15)、問い合わせフォームは https://seiwakasei.jp/contact、メールは data@seiwakasei.co.jp です。なお、同社は一般消費者向けの直接販売は行っておらず、研究内容に関する問い合わせはメールで受け付けています。

本稿では、成和化成がIFSCC Congress 2025で発表した三つの研究テーマの要旨と技術的示唆、ならびに大会情報と会社概要を整理して報じました。各発表はスキンケア、ヘアケア、サンケアという化粧品原料開発上の主要領域における応用可能性を示すものであり、処方設計や原料選定に関わる技術的な示唆を含んでいます。