高島屋が映像制作力を強化 ATAがソアズロック全株取得

ソアズロック全株取得

開催日:9月25日

ソアズロック全株取得
何が起きたの?
高島屋の連結子会社であるエー・ティ・エーが、映像制作会社ソアズロックの全株式を取得。CGやVFXなどの制作力を取り込み、広告・店頭演出の提案力を強化するための買収です。
私たちにはどんな影響があるの?
百貨店や商業施設での店頭演出が3DCGや没入型映像でよりリッチに。オンライン広告の映像コンテンツも強化され、来店体験や販促効果が向上する見込みです。

高島屋グループが映像制作力を取り込む――エー・ティ・エーがソアズロックの全株式を取得

2025年9月25日付で、株式会社高島屋の連結子会社である株式会社エー・ティ・エー(以下、エー・ティ・エー)が、映像制作に強みを持つ株式会社ソアズロック(以下、ソアズロック)の全株式を取得しました。今回の取得は、両社の経営資源と顧客基盤を相互に活用し、広告・プロモーション領域におけるサービス力の強化と新たな顧客体験の提供を目的としています。

発表は株式会社髙島屋から同日17時00分に公表されており、本リリースはグループ戦略である「まちづくり」の一環として位置づけられています。以下では、取得の背景、想定される事業シナジー、両社の主要な制作事例と会社概要を網羅的に整理します。

株式会社高島屋の連結子会社エー・ティ・エー、ソアズロックの全株式を取得 画像 2

取得の背景と今回のねらい

エー・ティ・エーはセールスプロモーション企画・運営、広告・WEBサイト制作、空間デザインの企画・施工管理などを一気通貫で手がける総合広告会社です。社名は「All Takashimaya Agency」に由来し、高島屋の宣伝・広告業務を担ってきました。従来は新聞広告や会報誌、店頭演出などオフライン領域に強みを持つ一方、近年はデジタル領域、特に動画制作やWEB広告へ注力しています。

ソアズロックは2012年創業のプロダクションカンパニーで、VFXやCGといった映像制作技術に高い専門性を有しています。自動車業界をはじめとする大手企業をクライアントに持ち、TV-CMやプロモーション映像、施設向けの没入型コンテンツ制作など高品質の映像表現を提供してきました。社名は「SOAR(舞い上がる)」と「ROCK(岩)」を組み合わせ、「岩をも天高く舞い上げる力」を示す意味が込められています。

今回の全株式取得は、エー・ティ・エーがソアズロックのCG・映像制作技術を取り込むことで総合広告会社としての事業ラインナップを拡充し、クライアントへの提案力を高めることを目的としています。百貨店やショッピングセンターにおける店頭演出では、3DCGやモーショングラフィックスを用いたビジュアルプロモーション(VP)演出を実施する計画が明示されています。

発表日
2025年9月25日 17時00分(株式会社髙島屋によるリリース)
取得形態
エー・ティ・エーによる株式会社ソアズロックの全株式取得
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シナジーの具体像:営業ネットワークと制作力の相互活用

今回の統合により期待されるシナジーは主に二つに分かれます。一つはエー・ティ・エーが持つ営業ネットワークと高島屋グループの顧客基盤、もう一つはソアズロックが持つ高度な映像制作力です。両者を掛け合わせることで、従来の広告・販促に映像技術を組み込んだ新たな提案や、店頭での体験価値向上を図ることが可能になります。

ソアズロック側もエー・ティ・エーの営業基盤を活用することで、関東・関西エリアでの受注機会拡大が見込まれます。加えて、広告・WEBサイト制作や空間デザインの提案を通じてクライアントとの関係性を深化させる意図が明確化されています。高島屋グループの「まちづくり」戦略の下で、グループ各社の強みを統合する形で事業基盤を強化する狙いです。

以下に、想定される活用例を整理します。

  • 百貨店・商業施設の店頭演出における3DCGおよびモーショングラフィックスを用いたVP演出の展開
  • 大型ビジョンや館内映像コンテンツにおける没入型映像の企画・制作(イベント時やシーズンプロモーションでの活用)
  • デジタル広告・WEBサイトの映像コンテンツ拡充によるオンラインとオフラインを連携したプロモーション提案
  • 関東・関西エリアでの受注拡大と顧客基盤の共同活用による営業効率化
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権益と業務の連携イメージ

エー・ティ・エーは百貨店を中心とする顧客接点とコミュニケーション設計のノウハウを持ち、ソアズロックは映像表現による体験価値の創出能力を有します。これらを組み合わせることで、単なる広告制作に留まらない、顧客接点での体験設計が可能になります。

実際のプロジェクトでは、企画段階から映像制作を前提にした設計を取り入れることで、販促効果の最大化やブランディングの一貫性確保が図れると見られます。

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両社の代表的な制作事例と強み

ここではエー・ティ・エーとソアズロックそれぞれの代表的な制作事例を具体的に紹介します。各社の事例は、今回の連携においてどのような付加価値が創出されるかを理解するうえで重要です。

以下の事例はプレスリリースで明示された内容を網羅しています。

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エー・ティ・エーの主な制作事例と領域

エー・ティ・エーはセールスプロモーション、会報誌制作、WEBサイト制作、スペースデザインなど幅広い領域で実績を有します。高島屋グループの企業広告やシーズナルプロモーションを担当してきた経験が特徴です。

主な事例は以下の通りです。

  1. セールスプロモーション
    • 新聞広告「TSUNAGU ACTION 明日に咲け」: 高島屋が主導するサステナブル活動『TSUNAGU ACTION』の企業広告を、2025年4月9日のTSUNAGU ACTION WEEKS開催時にエー・ティ・エーが制作。
    • 会報誌「月刊誌 Takashimaya Salon」: 外商顧客やゴールドカード会員など約30万人を対象に、ラグジュアリー商材や文化・芸術を多角的に紹介する月刊誌を制作。
  2. WEBサイト制作
    • Salon le Chic WEBサイト: ラグジュアリーブランドを集めたセレクトショップ『Salon le Chic』のWEBサイトを2024年秋冬の立ち上げに合わせてローンチ。
  3. スペースデザイン
    • JRセントラルタワーズのクリスマスツリー演出や京都髙島屋S.C.の開業1周年に伴う館内装飾を含むシーズンプロモーションで、造形から演出までを担当。
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ソアズロックの主な制作事例と映像表現

ソアズロックは3DCG、VFX、モーショングラフィックスを活用した映像制作に強みを持ち、大型ビジョン向けの表現やプロジェクションマッピングに近い没入型体験の制作実績があります。自動車業界をはじめ大手企業との取引実績が豊富です。

代表的な事例は以下の通りです。

  • JRゲートタワー リニアGATEビジョン: 大型ビジョンのサイズを活かし、3DCGでリニアを再現した映像制作を担当。名古屋駅から広がる可能性とリニアの疾走感を立体的に表現。
  • トヨタ会館ミュージアムコンテンツ映像: 2024年のリニューアルオープンに伴い、9台のプロジェクターを使用して前後の壁面や床へ映像を投影。視聴者が没入する臨場感あるモビリティCGをプロデュース。

会社概要と重要な数値の整理

ここではプレスリリースに記載された両社の会社概要を正式な情報として列挙します。所在地、代表者、事業内容、資本金、設立年月日、URLを含めています。

記事の最後に、本稿で扱った主要項目を表形式でまとめます。

項目 エー・ティ・エー(ATA) ソアズロック
所在地 東京都中央区日本橋2-12-10 高島屋グループ本社ビル3階 愛知県名古屋市西区那古野1-36-17
代表者 代表取締役社長 伊藤 順彦 代表取締役社長 庄子 義信
事業内容 広告・WEBサイトの制作・データ解析、セールスプロモーションの企画・運営、店舗改装デザイン・環境装飾の企画・運営、各種サインの開発等 TVCM・プロモーションビデオ・3DCG・モーショングラフィックス等の制作
資本金 80百万円 3百万円
設立年月日 1985年2月1日 2012年7月2日
URL https://www.ata.co.jp/ http://soarzrock.co.jp/

今回の株式取得により、エー・ティ・エーはソアズロックの高いCG・映像制作技術を取り込み、総合広告会社としての提案領域を広げます。ソアズロックはエー・ティ・エーの営業ネットワークを活用して受注機会を拡大し、広告・WEBサイトや空間デザインを通じたクライアント関係の深化を図る計画です。

高島屋グループは「まちづくり」を総合戦略とし、百貨店を中核にグループ会社の強みを結集する取り組みを継続しています。本稿で整理した要点と会社概要は、今回の資本・業務連携の構図を理解するための基礎情報となります。