マイナビ調査:2026年卒は部分売り手市場、AI利用が倍増

2026年卒就職戦線総括

開催日:9月26日

2026年卒就職戦線総括
“部分売り手市場”ってどういうこと?
全体としては学生有利の売り手市場でも、志望先や選考段階で内々定が得られず活動を続ける学生がいる状況。7月末の活動継続率31.3%などの数値を基に表現しています。
就活でAIを使うのって企業にバレる?まずいことになる?
企業側も学生の生成AI利用を実感する割合が増えており(30.6%)、気づかれる可能性は高まっています。ESの推敲などは有効だが、自分の言葉に整え選考ルールを確認することが重要です。

2026年卒の就職戦線――「部分売り手市場」とは何を意味するのか

株式会社マイナビは2025年9月26日に『2025年度(2026年卒版)新卒採用・就職戦線総括』を発表しました。本稿では発表資料の主要なデータと解説を整理して伝えます。調査は企業の採用活動と学生の就職活動、キャリア形成活動を対象にまとめられており、報告の中心には〈売り手市場でありながら一部の学生は苦戦している〉という特徴的な分析があります。

発表資料は「TOPICS」として複数のポイントを掲げています。なかでも重要なのは①“部分売り手市場”としての実態、②インターンシップやオープン・カンパニーの拡大、③学生のAI利用拡大、④初任給引き上げと多様な福利厚生の導入、の4点です。以下で各項目を具体的な数値と共に読み解きます。

マイナビ、「2025年度(2026年卒版)新卒採用・就職戦線総括」を発表 画像 2

「部分売り手市場」の具体像

マイナビの分析によれば、2026年卒の就職活動は全体としては売り手市場の面を示す一方で、志望度や選考段階によっては内々定を得られず苦戦する学生も存在するため「部分売り手市場」と表現されています。具体的には、活動継続率の推移やエントリー社数の累計にその傾向が表れています。

調査で示されたポイントは次の通りです。学生の就職活動継続率は4月末時点で前年を下回ったものの、5月末・6月末は前年と同程度、7月末では31.3%と前年の28.0%を上回っています。平均エントリー社数は2月までは前年より減少していたものの、累計では前年を上回る結果となりました。満足のいく内々定を得られない学生が活動量を増やした影響が考えられます。

活動継続率(7月末)
2026年卒:31.3%(前年:28.0%)
平均エントリー社数
2月までは前年より減少、以降の累計では前年を上回る
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インターンシップとオープン・カンパニーの拡大

インターンシップや仕事体験の参加状況は過去最高水準となりました。26年卒学生のインターンシップ・仕事体験参加率は85.3%、平均参加社数は5.2社です。企業側の実施状況も高まり、学生と企業の接点が増加したことが確認できます。

さらに、三省合意で規定されるキャリア形成支援の4類型のうち、タイプ1に該当する「オープン・カンパニー」を実施(または予定)する企業は約69.9%で、前年から+20.9ポイントの大幅増となりました。学生側の参加率も上昇しており、オープン・カンパニーに参加した学生の割合は84.9%、参加者の67.5%が「志望度が上がった」と回答しています。

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インターン参加の実態と効果

参加率・参加社数の増加は、学生による企業理解の深化と志望度形成に直結しています。オープン・カンパニーの拡大は単に人数を増やすだけでなく、選考前の理解促進という面で効果を発揮していると報告されています。

以下に関連するポイントを整理します。

  • インターンシップ・仕事体験参加率:85.3%(過去最高)
  • 平均参加社数:5.2社(過去最高)
  • オープン・カンパニー実施企業:69.9%(前年から+20.9pt)
  • オープン・カンパニー参加学生の割合:84.9%(前年から+22.8pt)
  • 参加者のうち67.5%が志望度上昇を回答
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AI利用の急拡大と企業側の認識、初任給・福利厚生の変化

2026年卒の学生における就職活動でのAI利用率は前年(37.2%)から66.6%へと約2倍に拡大しました。利用目的は多岐にわたり、エントリーシート(ES)の推敲が最も多く68.8%、次いでES作成が40.8%、面接対策は前年の17.8%から36.6%へと約2倍に増えています。

企業側でも「学生が生成AIを利用している実感がある」と回答した割合が前年の12.3%から30.6%へと上昇しています。学生のAI活用が進むことで、企業は採用選考設計にAIの利用状況を踏まえる必要性が高まっています。

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初任給引き上げと多様化する福利厚生

新卒採用担当者への調査では、26年卒の採用のために初任給を引き上げた企業は約88.8%に達しました。厳しい採用環境を受けて、多くの企業が初任給の改定で採用力の強化を図っています。

併せて、従来型の待遇以外にも学生に訴求するユニークな福利厚生が増えています。調査に挙げられた具体例としては、社内ジムの併設、資産運用や金融教育の研修、有給休暇取得時の金銭的支援(有給を1日取得すると1万円支給する制度)などがあります。こうした施策は学生の関心を集める要素となっています。

  1. 初任給引き上げ:実施企業率 88.8%
  2. ユニーク福利厚生例:社内ジム併設、資産運用・金融教育研修、有給取得支援金など
  3. 企業側のAI認識:生成AI利用を実感する企業 30.6%(前年 12.3%)
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調査概要・研究者コメントと要点整理

本調査はマイナビキャリアリサーチLabがまとめたもので、詳細は同ラボのウェブページに公開されています。報告書には各種図表(図1〜図10)が添付され、データの時系列や項目別内訳を確認できるようになっています。資料はオンラインでの閲覧のほか、冊子版の請求についてはマイナビ広報部への問い合わせが案内されています。

調査担当者(マイナビキャリアリサーチLab 研究員・石田 力)は、今回の傾向を「VUCAの時代を象徴する複雑な展開」としてまとめ、売り手市場の外観がありつつも志向や選考状況によって苦戦する学生がいる点、AIの浸透とそれに伴う対応の必要性、初任給や福利厚生を含む企業の対応強化を指摘しています。研究員のコメントは調査結果の解釈と今後の検証・対話の重要性に言及しています。

公開日
2025年9月26日 11時00分
発表者
株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)
詳細資料URL
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250926_101951/
冊子版の入手
希望者は広報部へ問い合わせ(マイナビ)

本稿は発表されたすべての主要データとコメントを網羅的にまとめ、学生や採用担当者が状況を整理できるよう配慮して構成しました。以下の表に、記事内で紹介した主要ポイントを一覧で整理します。

項目 主要数値・内容 補足
就職戦線の特徴 “部分売り手市場” 一部の学生は順調、一部は内々定が取れず活動継続
活動継続率(7月末) 31.3% 前年28.0%を上回る
インターン参加率 85.3% 過去最高水準
平均インターン参加社数 5.2社 過去最高水準
オープン・カンパニー実施企業 69.9% 前年から+20.9ポイント
オープン・カンパニー参加学生割合 84.9% 前年から+22.8ポイント
AI利用(学生) 66.6% 前年37.2%から+29.2ポイント
AI利用の主な用途 ES推敲68.8%、ES作成40.8%、面接対策36.6% 面接対策は前年の約2倍
企業側のAI認識 30.6% 「学生が生成AIを利用している実感がある」割合
初任給引き上げ実施企業 88.8% 多くの企業が初任給を改定
ユニーク福利厚生の例 社内ジム、資産運用研修、有給取得支援金等 学生へのアピール施策として紹介

発表資料全文および図表はマイナビキャリアリサーチLabで公開されています。詳しい図表や時系列データを確認したい場合は上記URLを参照してください。冊子版の入手方法については、同社広報部への問い合わせが案内されています。

参考リンク: