心拍でつながる新体験、万博で示した未来のスポーツ
ベストカレンダー編集部
2025年9月26日 15:32
心拍でつながる展示
開催期間:9月3日〜9月8日

大阪・関西万博で見えた「心拍」でつながる新しいスポーツ体験
スポーツ庁は2025年9月3日(水)から9月8日(月)までの6日間にわたって大阪・関西万博にて「Sports Future Lab~スポーツがつくる未来~」を開催しました。プレスリリースはスポーツ庁「ここスポ」広報事務局から2025年9月26日13時00分に配信されています。
会場で特に注目を集めた展示のひとつが、畳の茶室空間に入り心拍計を装着して一体感を体験する「SYNC HEARTS BOX」です。スポーツ庁が推進する「Sport in Lifeプロジェクト」の一環として出展されたこのブースは、伝統文化である茶道の精神を最新技術で再現し、来場者に新しい「共感」の体験を提供しました。

SYNC HEARTS BOXの構成と体験内容
SYNC HEARTS BOXは畳敷きの茶室という限定された空間に複数の来場者が入り、それぞれ心拍計を装着して参加します。心拍のリズムが周囲と同調していく「心拍同調」の仕組みを用い、茶道の「一座建立」の精神を可視化・体感化する試みです。
体験の具体的な要素として、来場者が協調して行う「紙風船エクササイズ」などが用意され、限られた室内でもメンバーと心と体がシンクロする感覚を味わえる設計になっていました。来場者の反応は好評で、ブース前に行列ができるほどの人気を集め、スポーツとテクノロジーの結びつきが示す新たな可能性を浮き彫りにしました。
- 会場
- 大阪・関西万博(Sports Future Labブース)
- 出展者
- スポーツ庁(Sport in Lifeプロジェクト)
- 体験要素
- 畳の茶室、心拍同調、紙風船エクササイズ、心拍計装着

観客が参加し試合に影響を与える「TheスマートフェンシングⓇトーナメント」
もうひとつの注目プログラムは、2025年9月6日(土)に実施された観客参加型イベント「TheスマートフェンシングⓇトーナメント」です。大日本印刷株式会社(DNP)が開発した「スマートフェンシングⓇ」と、筑波大学が開発したプレイヤーの心拍を感じるバイオシェア技術を組み合わせた取り組みが紹介されました。
このトーナメントは、観客とプレイヤーの心拍情報を会場全体で共有し、従来の観戦体験を拡張する試みです。スポーツ観戦が単なる「見る」行為から観客も能動的に関与する「共創」の場へと変化する様子が示されました。

スマートフェンシングⓇの特徴と観客参加の仕組み
「スマートフェンシングⓇ」はDNPがデジタル技術で既存競技を拡張して開発したコンテンツです。柔らかい剣とスマートフォンアプリを用い、誰でもどこでも、安全にフェンシングやパラフェンシングを楽しめる実戦的な体験を提供します。
当日のトーナメントでは、観客がリストバンド型デバイスを装着することで、プレイヤーの心拍数がリアルタイムにバイブレーション(振動)とLED点滅で会場全体に共有される仕組みが導入されました。さらに、観客は自身のスマートフォンから「応援ポイント」を送信でき、その得点が試合結果に反映される仕掛けも組み込まれ、観客の物理的・デジタルな参加が試合の展開に影響を与える構造が実現しました。
- 実施日:2025年9月6日(土)
- 技術要素:DNPのスマートフェンシングⓇ、筑波大学のバイオシェア技術
- 観客参加:リストバンド型デバイス(振動・LED)、スマートフォンによる応援ポイント送信

競技の流れと来場者の体験
トーナメントでは、フェンシングのオリンピック金メダリストの宇山賢さんが登場し、来場者と真剣な勝負を繰り広げました。試合中の緊張や駆け引きがプレイヤーの心拍数の変化として会場に伝わり、観客はその生理指標を通じて試合の緊迫感を共有しました。
このような心拍を「見える化」する仕組みは、単に観戦体験を高めるだけでなく、日常のレクリエーションや教育現場への展開も期待されています。具体例としては、運動会などで子どもの心拍数を親が一緒に楽しむ仕組みなどが挙げられ、スポーツを介した家族・地域レベルの関わり方に応用できる可能性があると報告されています。
筑波大学の松井崇准教授は、スポーツ観戦が人と人をつなぎ、孤独の解消や健康増進にも寄与するとコメントしています。スポーツとテクノロジーの融合は、教育や地域スポーツへの適用も見込まれています。
注意書き:スマートフェンシングはDNP大日本印刷株式会社の登録商標です。

「Sport in Life」と「ここスポ」が目指す情報ハブとしての役割
スポーツ庁は今回の万博出展を通じ、Sport in Life(SIL)の理念に基づき、スポーツを「する」「みる」「ささえる」あらゆる立場の人々に新たな価値を提供する場を設けました。展示や体験を通じて、スポーツが持つ多面的な価値を社会全体で共有する試みが行われました。
この取り組みを支える情報発信基盤として、スポーツ庁が運営するポータルサイト「ここスポ(https://cocospo.go.jp/)」が紹介されました。ここではスポーツをはじめたい人や支える人が必要な情報を見つけられるハブ機能を担っています。

ここスポの主な機能
「ここスポ」は日常生活の中でスポーツを楽しむための情報を集めたポータルサイトです。マイここスポユーザーと、スポーツの機会や場所を提供するオーナーをつなぐ役割があります。
- 現在地からの検索:スマートフォンやパソコンのGPS情報を利用し、近くで開催されているイベントや施設を探せます。
- スポーツの種類から検索:興味のあるスポーツを選ぶことで、そのスポーツに関連する情報を簡単に見つけられます。
スポーツ庁は、このプラットフォームを通じて誰もがスポーツに親しむきっかけを提供し、健康・共生・地域活性化につながる施策展開を継続する意向を示しています。スポーツ庁長官の室伏広治氏は「スポーツはする・みる・ささえるすべての立場を結びつける力を持つ。今回開催された観客参加型の『TheスマートフェンシングⓇトーナメント』はその未来像を象徴する取り組み」と述べ、その社会的意義を強調しています。

展示の要点まとめ
以下の表は、万博に出展された主な取り組みとその特徴を整理したものです。展示全体の要旨を一目で把握できるようにまとめています。
項目 | 内容 |
---|---|
イベント名 | Sports Future Lab~スポーツがつくる未来~(大阪・関西万博出展) |
主催・出展 | スポーツ庁(Sport in Lifeプロジェクト、ここスポ広報事務局) |
開催期間 | 2025年9月3日(水)~9月8日(月) |
SYNC HEARTS BOX | 畳の茶室空間、心拍計装着による心拍同調体験、紙風船エクササイズによる心身のシンクロ体験 |
TheスマートフェンシングⓇトーナメント | 実施日:2025年9月6日。DNPのスマートフェンシングⓇと筑波大学のバイオシェア技術の融合。リストバンドで心拍情報を振動・LEDで共有、観客の応援ポイントが試合結果に反映される仕組み |
主な登場人物・組織 | 宇山賢(フェンシング・オリンピック金メダリスト)、筑波大学(松井崇准教授ら)、大日本印刷株式会社(DNP)、室伏広治(スポーツ庁長官) |
ポータルサイト | ここスポ(https://cocospo.go.jp/):現在地検索、スポーツ種別検索等の機能を提供 |
プレスリリース日 | 2025年9月26日 13:00(スポーツ庁「ここスポ」広報事務局) |
商標注意 | スマートフェンシングはDNP大日本印刷株式会社の登録商標 |
今回の出展は、心拍などの生理指標を用いて人と人とのつながりを可視化する技術が、スポーツ観戦や体験のあり方を変え得ることを示しました。また、これらの技術やプラットフォームは教育や地域活動、日常のレクリエーションといった実生活の場へ応用される可能性が示唆されています。スポーツ庁はこの成果を踏まえ、スポーツが広く親しまれる社会づくりに向けた情報発信と施策推進を継続する方針です。
参考リンク: