夏川草介最新作『エピクロスの処方箋』刊行、医療と幸福を問う

エピクロスの処方箋刊行

開催日:9月29日

エピクロスの処方箋刊行
前作を読んでないと楽しめない?
シリーズ作品だが本作は単体でも楽しめる作りになっている。前作を読んでいると人物背景やテーマの連続性、哲学的な対比がより深く理解できる。
電子版って発売日から買える?
電子書籍は同日配信予定とされているが、配信の有無や価格は各電子書籍ストアで異なる。購入前に各ストアでの配信状況を確認すると確実。

医療小説の系譜を継ぐ新章――『エピクロスの処方箋』刊行の背景

2025年9月29日、株式会社水鈴社は現役医師であり作家の夏川草介による新刊小説『エピクロスの処方箋』を刊行すると発表した(発表日時:2025年9月29日 09時32分)。同社は本社を東京都渋谷区に置き、代表取締役社長は篠原一朗氏である。刊行日は同じく2025年9月29日で、紙の上製本に加え電子書籍も同日配信予定となっているが、配信の有無や価格は各電子書籍ストアにより異なる。

夏川草介は現役の臨床医として長年地域医療に従事してきた経験を作家活動に反映させてきた作家である。前作『スピノザの診察室』(2023年10月刊)は10万部を突破するベストセラーとなり、2024年本屋大賞第4位、京都本大賞受賞、さらに映画化も決定している。本作はその続編にあたり、シリーズとしての哲学的アプローチと現場からの視点が再び融合した作品である。

本屋大賞第4位 & 京都本大賞受賞、映画化も決定の『スピノザの診察室』続編 夏川草介が描く人の命と幸福について 『エピクロスの処方箋』刊行 画像 2

シリーズの位置づけと哲学的な命題

シリーズのタイトルにある「スピノザ」や「エピクロス」は、著者の人生観や物語の根底にある思想を示す象徴的な名前である。夏川氏自身が哲学者から受け取った示唆を医療現場での経験と重ね合わせ、物語の中で提示することを本シリーズの主要テーマとしている。

本作の主題は「幸福とは何か」という問いである。臨床で日々様々な命の在り方に接するなかで、幸福・快楽・孤独といった概念を改めて問い直すことが、作者が本作に込めた中心命題となっている。

本屋大賞第4位 & 京都本大賞受賞、映画化も決定の『スピノザの診察室』続編 夏川草介が描く人の命と幸福について 『エピクロスの処方箋』刊行 画像 3

物語のあらすじと登場人物――地域医療に移った医師の葛藤と選択

主人公は雄町哲郎。大学病院で多くの難手術を成功させ、将来を嘱望されていた力量ある内科医であるが、家族の事情により、町中の地域病院へ移り住むことになる。そこで哲郎は患者、その家族、医師の仲間たちと向き合いながら、生と死、幸福の意味を改めて考えることになる。

ある日、大学の准教授・花垣から持ち込まれた重い症例は、82歳の老人。驚くべきことに、その老人はかつて哲郎が激怒させた大学の絶対権力者、飛良泉寅彦教授の父親だった。物語は、哲郎が新たな難手術に挑み、医師として、そして人間としてどのようにあるべきかを模索する過程と、個性豊かな同僚たちとの関係変化を丹念に描き出す。

本屋大賞第4位 & 京都本大賞受賞、映画化も決定の『スピノザの診察室』続編 夏川草介が描く人の命と幸福について 『エピクロスの処方箋』刊行 画像 4

章構成と物語の展開

本書は短編風に分節された構成で、各話が連鎖する形で大きな主題に迫る。目次は以下の通りである。

  • 第一話 錦秋
  • 第二話 冬至考
  • 第三話 百鬼夜行
  • 第四話 初弘法

各話は季節や儀礼、地域の習俗を背景に据えつつ、個々の患者や家族が抱える事情を通して、主人公の内面と医療現場の倫理的課題を浮かび上がらせていく構成である。

著者の言葉と作品に込められた思想

夏川草介は本作に対するメッセージの中で、「幸福とは何か」を再度問い、幸福は環境が与えるものなのか、あるいは自分の力で生み出すものなのか、といった問いを提示している。著者にとってその問いは臨床の現場で年々重みを増しているという。

古代ギリシャの哲学者エピクロスに関しては、心に悩みがなく、肉体に苦痛がないことが快楽主義の要点として挙げられるとし、著者はそこに「孤独ではないこと」を付け加えることで、現代社会のつながりと孤立の問題にまで視点を広げている。

著者プロフィールと関連作

夏川草介(なつかわ・そうすけ)は1978年大阪府生まれ。信州大学医学部を卒業し、長野県で地域医療に従事している。2009年に『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞してデビュー。同書は2010年本屋大賞第2位となり映画化された。

他の著作には世界40か国以上で翻訳された『本を守ろうとする猫の話』、『始まりの木』、コロナ禍の現場を綴ったドキュメント小説『臨床の砦』、そして2023年刊行の『スピノザの診察室』(2024年本屋大賞第4位・京都本大賞受賞、映画化決定)などがある。著者の長年の医療経験は作品全体に深みを与えている。

刊行情報と購入に関する詳細

刊行に関する書誌情報は次のとおりである。発売日は2025年9月29日、定価は1,980円(本体価格+税10%)。書籍の体裁は四六判上製、頁数は360頁、ISBNは978-4-910576-05-3である。装画は五十嵐大介、装丁は名久井直子が担当している。

電子書籍は同日発売予定だが、実際の配信有無や価格は各電子書籍ストアにより異なるため、購入時にはストアごとの案内を確認する必要がある。特設サイトやシリーズの関連サイトも運用される予定で、詳細情報や関連コンテンツの更新は各サイトで案内される。

書名
エピクロスの処方箋
著者
夏川草介
発売日
2025年9月29日
定価
1,980円(本体価格+税10%)
ISBN
978-4-910576-05-3
体裁・頁数
四六判上製・360頁
装画/装丁
装画:五十嵐大介/装丁:名久井直子
出版社
株式会社水鈴社(本社:東京都渋谷区 代表取締役社長:篠原一朗)
特設サイト
https://natsukawa-suirinsha.jp/

また、本シリーズや前作に関する情報は以下の関連サイトでも案内されている。『スピノザの診察室』特設サイトはhttps://spinoza-clinic.jp/、前作の発表プレスリリースはPR TIMES上で公開されている。

  • 『スピノザの診察室』発売(2023年10月27日配信): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000084197.html
  • 『スピノザの診察室』第12回京都本大賞受賞(2024年10月31日配信): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000084197.html

物語の楽しみ方と読書上の注意点

本作はシリーズ作品ではあるが、出版社は本作が単体でも楽しめるように構成していることを明示している。前作を読んでいると人物の背景やシリーズのテーマをより深く理解できるが、初めて夏川作品を手に取る読者でも物語の主要な流れや主題に接することができる。

医療の描写や倫理的な問題が題材となるため、医療現場の現実や終末期に関する描写が含まれる点に留意して読み進めるとよい。物語は患者や家族、医師それぞれの視点で綴られ、幸福や孤独といった普遍的なテーマに丁寧に迫る構成である。

刊行要項の一覧表と締めくくり

以下にこの記事で触れた主要情報を一覧表にまとめる。刊行の基本データ、著者情報、関連サイトなどを整理して提示する。

項目 内容
書名 エピクロスの処方箋
著者 夏川草介(なつかわ・そうすけ)
発売日/発表日時 発売日:2025年9月29日/発表日時:2025年9月29日 09時32分
定価 1,980円(本体価格+税10%)
ISBN 978-4-910576-05-3
体裁・頁数 四六判上製・360頁
装画/装丁 装画:五十嵐大介/装丁:名久井直子
出版社 株式会社水鈴社(本社:東京都渋谷区 代表取締役社長:篠原一朗)
特設サイト https://natsukawa-suirinsha.jp/
関連サイト 『スピノザの診察室』特設サイト: https://spinoza-clinic.jp/(関連プレスリリースあり)

以上が『エピクロスの処方箋』刊行に関する主要事項の整理である。本作は医療現場での経験を土台に、古代哲学の示した問いと現代の人間関係の問題を織り交ぜながら、主人公の選択と周囲の人々との関係性を通じて幸福の意味を問い直す物語として位置づけられている。刊行にあたっては出版社の特設サイト等で随時情報が更新されるため、詳細は該当サイトの案内を参照されたい。