フィジオロガス、会頭賞受賞 在宅透析の実用化を加速
ベストカレンダー編集部
2025年9月30日 11:26
会頭賞受賞と在宅透析加速
開催日:9月16日

万博レガシーの場で評価された在宅血液透析ソリューション
2025年9月16日、万博会期中の記念事業として大阪商工会議所とMedTech Actuatorが共催した「MedTech Actuator Global Pitch Showdown」において、フィジオロガス・テクノロジーズ株式会社(以下、フィジオロガス)が最優秀賞に当たる大阪商工会議所会頭賞(賞金:500万円相当)を受賞しました。本リリースは当該受賞の報告と、同社が進める在宅血液透析装置の開発・事業化に関する詳細をまとめたものです。
本ピッチ大会は世界21か国・地域から選抜されたメドテック系スタートアップ8社が集い、医療・ヘルスケアの課題解決に資する技術やアイデアを披露する場となりました。出場企業は国内外の多様な課題に応える提案を行い、審査は臨床的有効性、事業実現可能性、社会インパクト等を総合的に評価する形式で実施されました。
- 開催日:2025年9月16日(万博会期中)
- 主催:大阪商工会議所、MedTech Actuator
- 参加国・地域の例:日本、オーストラリア、カナダ、韓国、スペイン、シンガポール、台湾、英国 他(計21か国・地域から選抜)
- 出場企業数:8社(メドテック分野のスタートアップ)
受賞時の写真では、左から大阪商工会議所会頭の鳥井信吾氏、フィジオロガス代表 宮脇一嘉氏、MedTech Actuator CEO Dr. Buzz Palmerの姿が確認できます。また、当日の資料には同社が開発中の装置の製品イメージも添えられていました。

フィジオロガスの技術概要と在宅血液透析が抱える課題
フィジオロガスは北里大学発のスタートアップで、代表取締役は宮脇一嘉氏、取締役CTOとして北里大学医療衛生学部准教授の小久保謙一氏が参画しています。同社は、家庭で安全かつ簡便に運用できる在宅専用の血液透析装置の開発を進めています。
在宅血液透析の導入は、患者のQOL(生活の質)向上や生命予後の改善が期待されますが、日本では現状、多くの障壁が存在します。以下に国内の現状と同社が解決を目指す技術的なポイントを整理します。
国内の透析治療の現状と在宅透析の普及状況
日本では末期腎不全患者が約34万人存在し、クリニックにおける標準的な血液透析は1回4時間、週3回という時間的負担の大きい療法です。この運用は患者の日常生活に大きな影響を及ぼします。
一方で在宅での血液透析は通院不要で頻回治療が可能になり、臨床的には生命予後の改善やQOLの向上が報告されています。しかし日本では在宅向けに設計された透析装置が存在しないことから、自宅導入のハードルが高く、現状在宅血液透析を受けている患者は約800名程度に留まっています。主要な障壁には以下が含まれます。
- 既存クリニック用機器は大型で給排水配管が必要であること
- 水質管理や警報対応など複雑な操作が必要であること
- 患者・家族への導入・運用支援体制が十分に整っていないこと
フィジオロガスが実用化を目指す技術の特徴
フィジオロガスの技術は、北里大学の小久保准教授の研究成果を基に、尿毒素を吸着除去する仕組みを取り入れた点が特徴です。透析液を装置内で再循環させることで、装置の小型化と消耗品の最適化を図っています。
この技術により、従来の大型機器に比べて家庭環境に適した運用が可能となり、導入や運用の簡素化、安全性の確保、頻回透析の実現につながることが期待されます。臨床面では生命予後の改善、社会面では患者の社会復帰・就業促進、経済的な有用性の高さが想定されています。
- 技術の核
- 尿毒素吸着による透析液の再循環システム
- 期待される効果
- 装置の小型化、家庭での安全運用、頻回透析による臨床的改善
受賞の意味と支援体制の役割
今回の受賞は、フィジオロガスの技術と事業計画が審査員から高く評価された結果です。受賞に伴う副次的な価値として、事業化支援ネットワークやパートナー企業の紹介、資金面での支援(賞金相当)などが想定されます。受賞日はプレスリリースで公表された通り、2025年9月30日 10時00分(リリース発表日時)に報告されましたが、ピッチ実施日は2025年9月16日です。
本件に関連する支援組織の概要も整理します。大阪商工会議所は健康・医療を戦略分野として位置づけ、医工連携プラットフォーム「次世代医療システム産業化フォーラム」を中心に四半世紀にわたり医療機器開発のあらゆるステージを支援してきました。実績としては以下の通りです。
- 医療現場ニーズと企業のマッチング:約1000件
- 事業化相談対応:約4000件以上
- 産業振興のための全国最大規模のプラットフォーム運営
MedTech Actuatorはオーストラリア・メルボルン、シンガポール、大阪に拠点を持つ医療・ヘルスケア分野のアクセラレータであり、2024年3月に大阪商工会議所と連携協定を締結、同年10月に大阪に日本拠点を設置しています。主な実績は以下の通りです。
指標 | 数値 |
---|---|
連携パートナー数 | 150を超える国内外のパートナー |
外部メンター数 | 約100名 |
支援したスタートアップ数 | 1000社超 |
支援先の合計時価総額 | 40億USD |
支援累計資金調達額 | 7億USD以上 |
これらのネットワークやノウハウが、フィジオロガスの製品開発・事業化にとって貴重な支援資源となります。
今後の開発方針と事業化に向けた具体的取り組み
フィジオロガスは受賞を契機に、日本国内および海外市場に向けた在宅血液透析装置と消耗品の市場展開を加速する計画を表明しています。事業化に向けた具体的な取り組みは以下の領域に整理されます。
これらの取り組みは、製品の安全性・有効性の確保、量産体制の構築、規制対応、販売・保守体制の整備など多面的な活動を伴います。以下に計画の主要項目を列挙します。
- 製品開発の継続:プロトタイプの改良、臨床評価データの収集
- 規制対応:医療機器としての承認取得に向けた試験・申請準備
- 製造体制:消耗品を含めた量産設計とサプライチェーン構築
- 事業化支援の活用:大阪商工会議所やMedTech Actuatorなどのネットワークを通じた国内外パートナーの獲得
- 導入支援体制:患者・家族向けの教育、在宅運用のサポート体制構築
上記の各領域は並行して進められる予定であり、受賞に伴う資金的・人的支援がこれらの加速に寄与する見込みです。製品導入によって想定される影響としては、通院負担の軽減、頻回治療による臨床効果の向上、患者の就労や社会復帰の促進などが挙げられます。
当社に関する問合せ先は、フィジオロガス・テクノロジーズ株式会社 広報担当の問い合わせページ(https://physiologas.co.jp/jp-contact.html)に用意されています。また、企業情報や事業内容は同社の公式サイト(https://physiologas.co.jp/)で確認できます。
要点 | 内容 |
---|---|
受賞内容 | 大阪商工会議所会頭賞(賞金:500万円相当) |
ピッチ開催日 | 2025年9月16日 |
プレスリリース発表日 | 2025年9月30日 10:00 |
企業名 | フィジオロガス・テクノロジーズ株式会社 |
代表 | 宮脇一嘉(代表取締役) |
CTO(研究基盤) | 小久保謙一(北里大学医療衛生学部准教授、当社取締役CTO) |
本社所在地 | 神奈川県相模原市南区北里一丁目15番1号(北里大学 相模原キャンパス内) |
設立 | 2020年3月 |
資本金 | 1億円(2024年12月31日時点) |
事業内容 | 在宅血液透析装置の開発、製造販売 |
公式URL | https://physiologas.co.jp/ |
問い合わせ | https://physiologas.co.jp/jp-contact.html(広報担当) |
以上のとおり、フィジオロガスは受賞を契機に在宅血液透析の実用化と普及に向けた開発・事業化を進める計画です。本稿ではピッチ大会での受賞の事実、同社の技術的特徴、国内における在宅透析の現状と課題、支援組織の役割、そして今後の具体的な取り組みを整理して報告しました。
参考リンク: