JSCがタイで没入型撮影監督マスタークラスを開催
ベストカレンダー編集部
2025年9月30日 12:22
タイ・撮影監督マスタークラス
開催日:9月30日

国境を越えて始まった撮影監督育成の新たな一歩
日本映画撮影監督協会(JSC)は、文化庁の「クリエイター等支援事業」の委託を受け、海外初の出資協力というかたちでタイにて撮影監督マスタークラスを共同開催しました。報道発表は2025年9月30日 09時00分付で行われ、会場は「Bank Kok, Thailand」と記載されています。今回の取り組みは「Visualize The Unwritten」という標題のもと、単なる技術伝達にとどまらない、実践的かつ没入型の学習体験を意図しています。
このプログラムは、日本の撮影監督が世界の第一線で活躍するクリエイターと対話できる場を提供すること、そして海外に対する協会としての出資を行うという新たな挑戦を兼ねています。協同組合 日本映画撮影監督協会(以下JSC)が主体的に海外の人材育成プログラムに出資するのは今回が初めてであり、映画業界全体に向けた布石となる取り組みです。
- 発表日時
- 2025年9月30日 09時00分
- 開催場所
- Bank Kok, Thailand
- 主催・関係機関
- 文化庁(Agency for Cultural Affairs, Government of Japan)、独立行政法人日本芸術文化振興会(Japan Arts Council)、協同組合日本映画撮影監督協会(Japanese Society of Cinematographers)
- プロジェクト名
- Visualize The Unwritten

没入型プログラムの中身――実践と理論をつなぐ構成
本マスタークラスは中級から上級の撮影監督を対象に設計され、講義中心ではなく、実際に手を動かして技術を体得する形式を採用しました。照明、カメラ技術、カラーグレーディング、最新ワークフローの実演を中心に、脚本からショット設計、照明・レンズ選択、絵コンテ、セット調整に至るまで制作プロセス全体を網羅しています。
参加者は撮影監督、監督、俳優、そしてクルーが協働する現場を再現した環境で、物語を映像化する一連の工程を体験しました。講師陣によるデモンストレーションと参加者による実践が交互に行われ、理論と実践を繋げる形でスキルが構築されるカリキュラムになっています。

使用機材と実演内容の具体例
機材やワークフローの実演では、Sony Rialtoシステムを用いたレンズテストやモデルを使った肌色描写の比較デモなど、現場で即戦力となるテクニックが紹介されました。カメラと照明の相互作用、レンズ特性が映像表現に与える影響が丁寧に検証されました。
また、LUT(ルックアップテーブル)ワークフローとカラーコレクションに特化したセッションでは、特に「リニア(映像が焼き込み済み)」プロジェクトにおける手法の検討が行われ、ポストプロダクション段階での映像管理と色の一貫性を保つための実践的な手順が共有されました。
- Sony Rialtoシステムを用いたレンズテストと肌色描写デモ
- 照明設計とレンズ選択の相互効果の検証
- LUTワークフロー、リニアプロジェクトにおけるカラーコレクション実習
- 脚本分解からショット設計、絵コンテ作成、セット調整までの制作プロセス体験

日程と各日の重点項目
プログラムは3日間にわたり構成され、各日ごとにテーマが設けられて実践的な学びが進行しました。短期集中型ながら、撮影監督として必要な判断と技術を集中的に扱う設計になっています。
以下がプログラムスケジュールの概要で、初日から終日を通じて実践と議論が繰り返される流れです。
- Day 1
- 午前:監督・撮影監督によるセッション/脚本分解
- 午後:Sony Rialtoシステムによるレンズテスト、モデルを使った肌色描写比較デモ
- Day 2
- 短いシーンを3セッションに分けて撮影
- 夜:Q&Aセッション
- Day 3
- LUTワークフローとカラーコレクションにフォーカス
- 特に「リニア(映像が焼き込み済み)」のプロジェクトにおける手法の探求

登壇者と参加者――ローレンス・シャーを中心にした国際的な顔ぶれ
特別講師にはローレンス・シャー(Lawrence Sher, ASC)が招かれました。アメリカを代表する撮影監督としての長年の経験を背景に、光と色彩を用いた映像表現について実践的な指導が行われました。彼のキャリアと作品は、受講者にとって具体的な指針となりました。
JSCからは協会員がオペレーターとして参加し、マスタークラスの実行支援と参加者同士の技術交流を促進しました。さらにタイで活躍する若手ディレクターとの会談や、グローバル作品に携わるプロデューサーとの交流が行われ、国際的なコラボレーションの足がかりが築かれました。

ローレンス・シャー(Lawrence Sher, ASC)について
ローレンス・シャーは映画『ジョーカー』(2019)でアカデミー賞およびBAFTA賞にノミネートされたほか、カメリメージ国際映画祭でゴールデンフロッグ賞を受賞するなど高い評価を受けています。『ハングオーバー』シリーズ、『ガーデン・ステイト』といった幅広いジャンルでの作品経験を持ち、トッド・フィリップス監督との継続的なコラボレーションでも知られています。
また、ShotDeckという画像検索プラットフォームを創設し、世界中のクリエイターが視覚的参考を共有する場を提供してきた点も注目に値します。今回のマスタークラスでは、彼の経験に基づく光の扱い、色彩設計、画づくりの原理が具体的手法として示されました。
- 代表作:『ジョーカー』(2019)ほか
- 受賞・ノミネート:アカデミー賞・BAFTA賞ノミネート、カメリメージ ゴールデンフロッグ賞受賞
- その他活動:ShotDeck創設、世界的な視覚プラットフォームの提供

JSCメンバーと現地の関係者
JSCからは協会員がオペレーターとして現場に入り、参加型マスタークラスの実現に貢献しました。具体的な参加者名としては、萬代 有香(JSC)、JANG SUYEOL(JSC)が挙げられています。これらのメンバーは実務面での運営支援や技術的指導を担いました。
加えて、タイ国内で活動する若手ディレクターや、グローバルな作品を手がけるプロデューサーとの意見交換も行われ、両国の映画人が肩を並べて制作実務と表現について議論する場となりました。こうした交流は単発の講座にとどまらず、将来的な共同制作や人材交流の基盤として機能することが期待されます。
- JSC参加メンバー(例示)
- 萬代 有香(JSC)、JANG SUYEOL(JSC)
- 現地関係者
- タイで活躍する若手ディレクター、国際的なプロデューサー

取り組みの位置づけと要点の整理
今回のマスタークラスは、JSCが国際舞台で活躍できる撮影監督の育成を目指す長期的な取り組みの第一弾です。協会が海外プログラムに出資協力するという試みは、国内外の制作現場で即戦力となる技能を持つ人材の育成につながると位置づけられます。
プログラムを通じて行われた技術共有、共同制作の実践、国際的な人的ネットワーク構築は、個々の参加者のキャリアに直接的に資するだけでなく、日本と海外の映画産業間の相互理解を深める機会となりました。JSCは本プログラムを契機に、国際舞台で活躍する撮影監督の育成をさらに推進していく旨を表明しています。活動の最新報告は随時発信される予定です。
項目 | 内容 |
---|---|
プロジェクト名 | Visualize The Unwritten |
発表日時 | 2025年9月30日 09:00 |
開催場所 | Bank Kok, Thailand |
主催 | 文化庁(Agency for Cultural Affairs, Government of Japan)、独立行政法人日本芸術文化振興会(Japan Arts Council)、協同組合日本映画撮影監督協会(Japanese Society of Cinematographers) |
目的 | 国際舞台で活躍できる次世代撮影監督の育成。実践的かつ没入型プログラムを通じた技術・ワークフローの習得と国際交流の促進。 |
対象 | 中級~上級の撮影監督 |
特別講師 | ローレンス・シャー(Lawrence Sher, ASC) |
主な内容 | 脚本分解、照明・カメラ実習、Sony Rialtoレンズテスト、肌色描写比較、短編シーン撮影、Q&A、LUT・カラーコレクション(リニアプロジェクトの手法) |
参加JSCメンバー | 萬代 有香(JSC)、JANG SUYEOL(JSC)等(オペレーターとして参加) |
成果 | 実践的なワークフロー知識の共有、日泰の映画人による意見交換、国際的な人的ネットワークの形成 |
今後 | 本プログラムを皮切りに、JSCは国際舞台で活躍する撮影監督の育成をさらに推進。活動報告は随時発信予定。 |
以上が今回のマスタークラスの全体像と主な内容です。文化庁および日本芸術文化振興会と連携した本取り組みは、JSCの海外出資協力という新たな挑戦を伴い、現場志向の教育を通じて国際的な制作実務力の底上げを目指すものとして位置づけられます。