セブン×テレイグジスタンス、Astra導入へ2029年目標
ベストカレンダー編集部
2025年9月30日 13:09
セブンのAstra導入計画
開催日:1月1日

セブン‐イレブンとテレイグジスタンスが描く店舗の近未来
Telexistenceによる発表(2025年9月30日 11時01分)によれば、テレイグジスタンス株式会社(本社:東京都、代表取締役CEO:富岡仁、以下、TX)は、株式会社セブン‐イレブン・ジャパン(本社:東京都、代表取締役社長:阿久津 知洋、以下、セブン‐イレブン)と、生成AIを活用した小売業向けヒューマノイドロボット『Astra』の開発・検証および将来的な店舗導入に関する包括的なパートナーシップを締結した。発表は両社が協調して取り組む開発フェーズから実証、そして2029年中の店舗導入を視野に入れた長期計画であることを明示している。
このパートナーシップは単なる省力化のための技術導入にとどまらず、店舗運営における業務の役割分担を再定義し、人の業務を補完することでサービスの質を保ちながら現場の負担を軽減することを目的としている。特にレジカウンター内で高頻度に発生する作業の自動化を目指し、従業員はより接客や売場管理といった人にしかできない業務に注力できる体制を目指す。
ヒューマノイドロボットAstraとVLA(Vision-Language-Action)モデル
今回の取り組みの中心に位置するのが、ヒューマノイドロボット『Astra』と、ロボット基盤モデルであるVLA(Vision-Language-Action)モデルである。両社はAstraにこのVLAモデルを実装し、認識から計画、制御までを一気通貫で処理できるロボットの実用化を目指す。
VLAモデルとは、視覚情報(Vision)と自然言語的理解(Language)、および行動計画(Action)を統合してロボットの動作を生成する大規模基盤モデルを指す。本プロジェクトでは、実店舗における多様な状況を学習させるため、実環境に基づく大規模な動作データセットを構築しVLAモデルの学習に活用する。
Astraの役割と店舗で想定される業務
Astraは、商品補充、店内調理の一部、陳列の維持、レジ内での作業補助など、技術的・経済的にロボットによる自動化が可能と判断される業務領域を中心に設計される予定である。これにより従業員は接客や売場作りといった人の判断や感性が求められる業務に集中できるようになる。
また、導入に際しては現場の声を反映したハードウェア設計が重要視されており、店舗ごとの運用フローや物理的制約に合わせたカスタマイズや検証が行われる。ロボットは人と共存するための安全機構や操作ログの蓄積も想定されている。
VLAモデルと学習データの構成
VLAモデルの学習には、認識(物体・状況把握)、計画(動作決定)、制御(運動生成)を結び付ける統合データが必要となる。両社は、ロボットの動作データを大規模に収集・構築することで、実環境に適応したVLAの学習を進める計画だ。
テレイグジスタンスは既に遠隔操作によるデータ収集基盤を運用しており、コンビニ環境での飲料陳列ロボット『Ghost』を通じた動作データの蓄積実績がある。これらの実運用データを活用することで、実際の店舗環境に適したVLAモデルの高速な学習・検証を目指す。
共同で進める三つの取り組みと外部連携体制
本パートナーシップの具体的な取り組みは、2029年までの展開を念頭に置き、主に三つの柱から構成される。各柱は技術的・現場運用的観点から相互に補完し合う構造になっている。
また、早稲田大学の尾形教授や東京大学の松尾教授、トヨタ自動車などが理事を務める一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)とも連携し、学術・産業界の知見を取り入れながら大規模な事前学習用データセット収集とVLAモデルの開発を進める体制を整えている。
- 業務領域の特定と効果検証
店舗業務の中で技術的・経済的にロボットによる自動化が可能な領域を特定し、その効果を現場で検証する。現場の作業頻度や動作パターン、運用コストの比較などを基準とする。
効果検証には従業員の操作ログや顧客動線、作業時間データなどを用いることで、定量的な評価を行う。
- ハードウェア開発
現場の声を踏まえたヒューマノイドロボットのハードウェア開発を進める。安全性や耐久性、店舗での作業効率を考慮した設計が求められる。
導入候補となる店舗環境における物理的な制約を踏まえたプロトタイプの実験も予定されている。
- VLAモデルの学習と大規模データ収集
ロボットの動作データを大規模に収集・構築し、VLAモデルの事前学習用データセットとして活用する。TXが運用する遠隔操作データ収集基盤やセブン‐イレブンの店舗業務に基づくデータを組み合わせる。
この取り組みは、認識・計画・制御をEnd-to-Endで実現するための学習データ整備を目指すものであり、実用化のスピードを高めることを狙っている。
- 連携組織と関係者
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連携には一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)が含まれ、理事長は尾形哲也氏。AIRoAには早稲田大学の尾形教授、東京大学の松尾教授、トヨタ自動車などが理事として名を連ねている。
AIRoAは、経済産業省およびNEDOの研究開発事業に係る採択事業者として、ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業におけるロボティクス分野の生成AI基盤モデルの開発に向けたデータプラットフォーム開発にも関与している。
既存プラットフォームと実環境データの活用
TXは既に、コンビニエンスストア向けの飲料陳列ロボット『Ghost』を用いた遠隔操作によるデータ収集基盤を運用している。この基盤を通じて、実社会におけるロボットオペレーションの動作データを大規模かつ効率的に収集できる点が本プロジェクトでも重要な役割を果たす。
セブン‐イレブンの店舗業務に基づく膨大な実環境データとTXの収集基盤を組み合わせ、VLAモデルの学習用データセットを構築することで、AIとハードウェアの垂直統合的な実用化を進める。
データ収集基盤、採用情報、問い合わせ先
テレイグジスタンスのミッションは「世界のあらゆる物体を一つ残らず掴み取る」であり、小売・物流分野を中心に実用的なロボットの開発・運用を推進している。今回のパートナーシップはその延長線上に位置し、ロボット工学とAIを融合させたサービス提供を通じて、産業構造の変革を志向するものである。
採用情報や問い合わせ先については、以下の通り具体的に公表されている。開発フェーズで必要となる多様な専門人材を募集しており、ポジションは技術系の上位職まで幅広い。
- 採用中のポジション
- 1. 電気エンジニア(ロジスティクスチーム)
- 2. 機械設計エンジニア(ロジスティクスチーム)
- 3. ハードウェアエンジニアリング責任者(ヒューマノイドチーム)
- 4. ロボティクスシステムエンジニアリング責任者(ヒューマノイドチーム)
- 5. ロボティクス基盤モデルエンジニア(基盤モデルチーム)
- 6. ロボティクスシステムインテグレーションエンジニア(基盤モデルチーム)
- その他のポジション情報: https://jobs.lever.co/tx-inc.com
- 本件に関するお問い合わせ先: テレイグジスタンス株式会社 広報担当 : info@tx-inc.com
- 関連リンク: https://tx-inc.com/ja/top/
要点の整理と概要表
ここまでに述べたパートナーシップの主要点を整理する。期間は2029年中の店舗導入を念頭に置き、AstraとVLAモデルの開発・検証、実環境データ収集、ハードウェア開発を並行して進める計画である。外部連携としてAIRoAおよび学術・産業パートナーと協働する点も重要である。
以下の表は本記事で取り上げた主要情報を項目別にまとめたものである。プロジェクトの全体像を確認する際の参照として活用できる。
項目 | 内容 |
---|---|
発表日 | 2025年9月30日 11時01分 |
参加企業 | テレイグジスタンス株式会社(代表 富岡仁)、株式会社セブン‐イレブン・ジャパン(代表 阿久津 知洋) |
プロジェクト名(製品名) | ヒューマノイドロボット『Astra』およびVLA(Vision-Language-Action)モデルの開発・実証 |
導入目標時期 | 2029年中のセブン‐イレブン店舗への展開を念頭 |
主な取り組み | 1. 自動化可能業務の特定と効果検証 2. ハードウェア開発 3. VLAモデルの学習のための大規模データ収集 |
データ基盤 | TXの遠隔操作データ収集基盤(Ghost等)とセブン‐イレブン店舗データの組合せ |
外部連携 | 一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)、早稲田大学、東京大学、トヨタ自動車等 |
AIRoAに関する注記 | 経済産業省およびNEDOの研究開発事業に係る採択事業者として、生成AI基盤モデルのデータプラットフォーム開発に関与 |
採用情報 | 電気エンジニア、機械設計、ハードウェア責任者、ロボティクス基盤モデルエンジニア等。詳細は求人ページ参照 |
問い合わせ | テレイグジスタンス株式会社 広報: info@tx-inc.com |
関連リンク | https://tx-inc.com/ja/top/ |
本記事は、発表されたプレスリリースの内容を原文情報に基づき整理・要約したものである。プロジェクトは技術開発と実証、現場の運用検証を繰り返しながら進行する計画であり、関係各所との連携やデータ収集体制が実用化の鍵を握る。
参考リンク: