10月の飲食料品値上げ3024品目、酒類が主導
ベストカレンダー編集部
2025年9月30日 14:37
10月飲食料品値上げ3024品
開催日:10月1日

2025年10月の“値上げラッシュ”──3024品目、その実態と月次動向
株式会社帝国データバンクが実施した「食品主要195社」価格改定動向調査によると、2025年10月に発表された家庭用を中心とした飲食料品の値上げは合計3024品目に上りました。10月の1回あたりの値上げ率平均は17%で、前年同月(2924品目)から+100品目・+3.4%の増加となっています。
この数値は、2022年の統計開始以降での連続増加期間をさらに更新するもので、前年を上回る月が10カ月連続で続いています。単月で1000品目を超えるのは5カ月連続、また3千品目を上回ったのは4月(4225品目)以来6カ月ぶりのことです。
- 10月合計:3024品目
- 10月平均値上げ率:17%(発表時点の最大値を採用)
- 前年10月:2924品目(+3.4%)
- データの集計方法(注)
- 品目数および値上げは各社発表に基づく。年内に複数回値上げを行った場合は、それぞれを別品目としてカウントしている。
- 値上げ率は発表時点における最大値を採用している。また、価格据え置きで内容量を減らす形の「実質値上げ」も対象に含めている。

分野別の内訳(10月)
10月の値上げ品目を食品分野別に見ると、焼酎やリキュール、日本酒などアルコール飲料を中心とした「酒類・飲料」分野が2262品目と最も多くを占めました。次いで「加工食品」「調味料」が続きます。酒類分野で単月あたり2千品目を超えたのは、2023年10月(3198品目)以来2年ぶりのことです。
分野別の内訳は以下の通りです。ここには包装米飯や餅製品が目立った「加工食品」、焼肉のたれやみそ製品が中心となった「調味料」などの具体的な品目群も含まれます。
分野 | 10月の品目数 | 主な対象 |
---|---|---|
酒類・飲料 | 2262品目 | 焼酎、リキュール、日本酒、ビール、清涼飲料水など |
加工食品 | 340品目 | 包装米飯、餅製品など |
調味料 | 246品目 | 焼肉のたれ、みそ製品など |

2025年通年の累計と分野ごとの傾向
2025年通年(12月までに公表分)の累計は2万381品目(20,381品目)に達しました。この通年累計は前年実績の1万2520品目を62.8%上回る水準で、2023年(3万2396品目)以来、2年ぶりに2万品目を超えています。年間を通じた1回当たりの値上げ率平均は15%で、前年の17%と比べるとやや低下しています。
分野別の年間累計では、「調味料」が6148品目と最も多く、前年の1715品目から+4433品目・+258.5%と大幅に増加しました。また「酒類・飲料」は年間で4871品目と清涼飲料水やビール、清酒、焼酎、ワインといった幅広いカテゴリで値上げが実施され、前年比で8割を超える大幅増となりました。
- 通年累計:20,381品目(12月までに公表分)
- 通年平均値上げ率:15%(前年17%)
- 調味料:6,148品目(前年1,715品目、+2,583件)
- 酒類・飲料:4,871品目
分野ごとの背景と代表的な品目
「調味料」分野の増加は、原材料や包装資材のコスト上昇が直接的に商品価格に反映された結果が大きいとみられます。焼肉のたれ、みそをはじめとする調味料は日常消費の需要が高いため、価格改定の公表が積み重なった形で集中的にカウントされました。
「酒類・飲料」では、清涼飲料水やアルコール類で幅広い品目の価格・仕様見直しが行われており、特に焼酎やリキュール、日本酒などが10月に多くを占めました。これらは製造工程や輸送でのエネルギー・物流コストの影響を受けやすく、コスト増加の波及が大きく表れています。
値上げの主要要因と消費者行動の変化
帝国データバンクの分析では、2025年の飲食料品値上げは複数要因が重なって発生していると整理されています。要因別の比率を見ると、原材料由来のコスト上昇が全体の96.1%を占めており、これは他要因と比べても圧倒的です。次いで「物流費」や「エネルギー(光熱費)」、「包装・資材」「人件費」などが目立っています。
特に2024年以降の人手不足や賃上げの影響が時間差でコストに反映されていること、物流ではドライバー不足を背景とした運賃引き上げが継続していることが指摘されています。一方で、円安を要因とする値上げは全体の12.4%にとどまり、前年から大幅に低下しました。こうした点から、飲食料品の値上げは海外要因よりも国内のコスト構造変化に起因するケースが増えていることが示唆されます。
- 原材料高:96.1%(最も大きな要因)
- 物流費:78.8%(ドライバー不足や運賃上昇)
- エネルギー(光熱費):64.3%
- 包装・資材:62.9%
- 人件費:50.2%(賃上げの影響)
- 円安:12.4%(前年から低下)
消費者側では実質賃金が長期間マイナスの状態で推移していることにより、物価上昇への反発が根強く、小売現場では購買点数の減少やプライベート・ブランド(PB)製品へのシフトなど節約志向が顕著になっています。食品メーカー各社は本体価格の引き上げで収益確保を目指しているものの、消費者の理解を得られるかは不透明な面が残っています。
年末に向けた見通しとまとめ
先行きについて、帝国データバンクは11月の値上げについては“小休止”の見通しを示しています。調査時点(9月末)で11月の値上げ予定品目数は100品目未満にとどまり、11カ月ぶりに前年同月を下回ると見られています。その結果、年内に続いた値上げラッシュは年末にかけて一時的な落ち着きを迎える可能性があります。
ただし年間の通年着地見通しは、2022年の2万5768品目といったピーク水準までは達しないとみられ、2万1000品目前後での着地が予想されています。長期的には原材料や物流、人件費の上昇といった粘着性の高いコスト圧力が続いているため、値上げの根本要因が短期間で解消されない限り、飲食料品分野での値上げは長期化・恒常化する可能性があります。
項目 | 内容 |
---|---|
調査主体 | 株式会社帝国データバンク(「食品主要195社」価格改定動向調査) |
発表日 | 2025年9月30日 09時00分 |
対象期間(主な数値) | 2025年10月の値上げ動向および2025年通年(12月までの公表分) |
10月の値上げ合計 | 3024品目、平均値上げ率17% |
10月分野別上位 | 酒類・飲料:2262品目、加工食品:340品目、調味料:246品目 |
2025年通年累計(12月まで) | 20,381品目、平均値上げ率15% |
通年分野別(代表) | 調味料:6,148品目、酒類・飲料:4,871品目 |
主な値上げ要因(比率) | 原材料高96.1%、物流費78.8%、エネルギー64.3%、包装・資材62.9%、人件費50.2%、円安12.4% |
今後の見通し | 11月は小休止の公表が多く、年内は小休止へ。通年では約2万1000品目前後での着地を予想 |
集計上の注意点 | 年内に複数回値上げがあった品目はそれぞれ別品目としてカウント。値上げ率は発表時点での最大値を採用。実質値上げ(内容量減)も対象に含む。 |
以上は帝国データバンクが公表した調査結果の要約と分析です。2025年は原材料や物流、人件費の上昇が累積し、飲食料品の値上げが広範囲にわたって継続した年となりました。11月以降は一時的な小休止が示唆される一方、長期的なコスト構造の変化が残るため、業界全体の価格動向は引き続き注視が必要とされます。