国際交流基金賞2025受賞者発表、授賞式は10月22日

国際交流基金賞授賞式

開催日:10月22日

国際交流基金賞授賞式
誰が今年の国際交流基金賞を受賞したの?授賞式はいつ?
発表は2025年10月14日。受賞者はカナダの映画監督・アーキビストのマーティ・グロス氏と、韓国の日本語教育者・鄭 起永氏。授賞式は2025年10月22日に開催予定です。
この賞はどんな基準で選ばれてるの?
長年の継続的な活動、国境を越えた交流への具体的な貢献、今後の活動継続の見込みが重視されます。内外の有識者や一般推薦を含む106件の応募から審査で選定されました。

第52回「国際交流基金賞」――選考の経緯と授賞の概要

国際交流基金(JF)は、1973年の設立翌年から実施している「国際交流基金賞」の2025年度受賞者を決定したと発表した。発表は2025年10月14日17時00分付で行われ、今年度は第52回にあたる。受賞対象は、日本と海外の相互理解促進に顕著な貢献があり、引き続き活躍が期待される個人または団体である。

今年度の選考は、内外各界の有識者及び一般公募による推薦を含む総計106件の応募・推薦のなかから、有識者による審査を経て実施された。最終的に2件が受賞対象として選定され、授賞式は2025年10月22日(水)に開催される予定である。メディア向けの問い合わせ先については、国際交流基金のメディアユーザーページを参照するよう案内されている。

2025年度「国際交流基金賞」受賞者決定 画像 2

選考のポイントと公表事項

本賞は学術や芸術等の幅広い文化活動を対象とし、過去の受賞者も多分野にわたる。今回の選考では、長年にわたる継続的な活動国境を超えた交流の促進に寄与する実績、および今後の活動継続の見込みが重視された。公表された資料には、選考を経た受賞理由の詳細や、受賞者の経歴・業績が含まれている。

受賞者として発表されたのは以下の2名である。1点目はカナダの映画監督・アーキビストであるマーティ・グロス(Marty Gross)氏。2点目は韓国の日本語教育の第一人者である鄭 起永(ジョン・ギヨン/JUNG Giyoung)氏である。両者の活動分野は異なるが、ともに日韓・日米・日英など国際的な相互理解に明確な貢献を果たしている点が評価された。

2025年度「国際交流基金賞」受賞者決定 画像 3

マーティ・グロス氏:映像による日本文化の記録と復刻

マーティ・グロス氏はカナダ出身の映画監督、アーキビスト、コンサルティング・プロデューサーであり、日本の伝統芸能や民藝運動を世界に紹介してきた人物である。氏は1948年にトロントで生まれ、ヨーク大学で東洋学を専攻した。1970年に来日し陶工の修行を行った後、映像作家としての活動を開始した。

代表的な作品や活動としては、児童の美術教育に関するショート・フィルム『AS WE ARE』、福岡県小石原焼や大分県小鹿田焼の陶工を追った『陶器を創る人たち』(1976)、および1980年の『文楽 冥途の飛脚』がある。とくに『文楽 冥途の飛脚』は、上演を記録する映像作品として全編約1時間半にまとめられ、人形・人形遣い・義太夫の各要素を多角的なカメラワークで捉える構成や、ドナルド・リチーによる英語字幕などを通じて海外への紹介に大きな役割を果たした。

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映像アーカイブと修復の取り組み

グロス氏の現在進行中の主要な業績の一つは、1930年代から1970年代にかけて撮影された「民藝運動」に関する記録映像の発掘・修復・公開を目的とした「民藝運動フィルムアーカイブ」である。氏は英国の陶芸家バーナード・リーチが1930年代に撮影した16ミリ記録映像をはじめ、多数の映像資料を収集・修復している。

収集活動は日本、韓国、英国、米国など国内外を訪れて実施され、職人の技や日常の生活用品に見出される美意識を映像で保存・再提示することに重点を置いている。この作業により、民藝運動の歴史的映像資料が再評価され、現代の視点で再公開される基盤が整えられている。

主な映像作品
『AS WE ARE』(短編、支援を要する児童の美術教育に関する作品)
『陶器を創る人たち』(1976)— 小石原焼・小鹿田焼の陶工を取材
『文楽 冥途の飛脚』(1980)— 文楽の上演記録と解説
アーカイブ活動
民藝運動フィルムアーカイブ(発掘・修復・公開)
英国・日本・韓国・米国での資料収集

加えて、グロス氏は米国の映画配給会社クライテリオンの日本部門コンサルタントとして、日本の古典的名作映画のソフト販売や公開に関わり、関係者インタビューを通じて日本映画史に関する貴重な証言を記録してきた点も評価されている。大映京都撮影所での『文楽 冥途の飛脚』の撮影や、ドナルド・リチーとの共同作業など、国際的なネットワークを通じた紹介活動が受賞の主要な理由とされている。

鄭 起永(ジョン・ギヨン)氏:日本語教育を基盤にした地域と人材の架け橋

鄭 起永(ジョン・ギヨン)氏は、韓国における日本語教育のリーダーであり、30年以上にわたって高等教育機関で日本語教育の研究と実践を牽引してきた。釜山外国語大学校においては、日本語融合学部を創設し、「韓日文化コンテンツ専攻」「ビジネス日本語専攻」「日本IT専攻」の三つの専門専攻を配置することで、1000名を超える学生が学ぶ韓国最大の日本語教育拠点を築いた。

教育方法や教材開発、ICTの活用、文字教育教材の整備、Can-do評価の導入など、授業設計や評価法の面でも先駆的な取り組みを行い、国内外での評価を得ている。学会運営や教員養成、行政との連携にも関与し、日本語教育の制度的基盤の整備にも寄与してきた。

教育を超えた地域貢献と人的交流

鄭氏は言語教育にとどまらず、国際相互理解や地域社会との連携にも力を入れている。2003年からは対馬での漂着ごみ清掃活動を継続し、日韓の学生・住民・NPOが協働することで環境保全と信頼回復の実践モデルを構築した。

また、2010年以降は日本企業への就職支援を継続的に実施し、累計で364名以上の韓国人学生を日本企業に送り出した実績がある。さらに2012年には継承語教育の拠点として『釜山日本村』を設立し、日本語・日本文化の継承教育を展開、出版や情報発信を通じ地域のモデルケースとなっている。2024年には釜山韓日文化交流協会会長に就任し、地域社会に根ざした交流の深化にも貢献している。

  • 教育機関での組織化:日本語融合学部(3専攻、学生数1000名超)
  • 教育手法:ICT活用、Can-do評価、文字教育教材の開発
  • 地域連携:対馬での漂着ごみ清掃活動(2003年〜)
  • 就職支援:2010年以降、累計364名以上の日本企業就職実績
  • 継承語教育:2012年『釜山日本村』設立
  • 組織運営:2024年 釜山韓日文化交流協会会長就任

これらの活動により、鄭氏は語学教育を基盤として環境保全、雇用支援、文化継承といった社会的課題と教育を結びつけ、日韓の人的・文化的ネットワーク構築に寄与している点が授賞理由として明示されている。

まとめ:受賞者の特徴と今回のポイント(要点整理)

本章では本記事で取り上げた内容を分かりやすく表形式で整理する。以下の表には、受賞発表日、選考件数、授賞式の日付、受賞者情報(氏名・所属・国籍)と主な業績・授賞理由、問い合わせ先の案内を含めている。

項目 内容
発表日時 2025年10月14日 17時00分(国際交流基金発表)
選考件数 106件(内外の有識者及び一般公募による推薦)
授賞式 2025年10月22日(水)
受賞者(1) マーティ・グロス(Marty Gross)
所属:マーティ・グロス・フィルム・プロダクション(プロデューサー/監督)[カナダ]
主な業績:『AS WE ARE』『陶器を創る人たち』(1976)、『文楽 冥途の飛脚』(1980)、民藝運動フィルムアーカイブ(発掘・修復・公開)、クライテリオン日本部門のコンサルタント活動など
授賞理由:日本の伝統芸能や民藝運動の映像による国際紹介とアーカイブ保存・修復への貢献
受賞者(2) 鄭 起永(ジョン・ギヨン/JUNG Giyoung)
所属:釜山外国語大学校 教授[韓国]
主な業績:日本語融合学部の創設(韓日文化コンテンツ専攻、ビジネス日本語専攻、日本IT専攻)、ICT・Can-do導入、対馬での漂着ごみ清掃(2003年〜)、日本企業就職支援(2010年以降 364名超)、釜山日本村(2012年設立)、釜山韓日文化交流協会会長(2024年就任)など
授賞理由:30年以上の日本語教育の実践と研究、教育を基盤とした日韓相互理解促進への多面的な貢献
問い合わせ 本件に関する問い合わせは国際交流基金のメディアユーザーページを参照
関連リンク https://www.jpf.go.jp/j/about/award/archive/2025/index.html

以上が国際交流基金による2025年度「国際交流基金賞」受賞者決定の公表内容の要点である。写真クレジットとしては「photo by Grant Delin」が付記されている。受賞者それぞれの具体的な業績と授賞理由を示す情報は、本記事の本文に記載した通りである。メディア向けの詳細な問い合わせや追加資料については、国際交流基金の公式ページを参照のこと。

参考リンク: