トヨタがispaceと連携 次世代ローバー設計を支援

次世代ローバー支援契約

開催日:10月22日

トヨタって具体的に何を支援するの?
トヨタは概念設計段階のシステムレベル評価や品質向上手法を提供し、自動車開発で培った設計・統合ノウハウをローバーに応用して信頼性やデータ収集性能の向上を図ります。
この連携でローバーはいつ月に行くの?
今回の契約は設計支援が目的で、発表自体は2025/10/22。ローバーの実際の月面運用はミッション3が2027年、ミッション4は現時点で2028年内見込みで、最終的に変更の可能性があります。

トヨタ自動車とispace、次世代小型ローバーの概念設計で契約締結

2025年10月22日 15時32分に発表されたプレスリリースによれば、株式会社ispace(本社:東京都中央区、代表取締役:袴田武史、証券コード9348)は、トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:佐藤恒治)と契約を締結しました。本契約は、ispaceが現在開発を進める次世代小型探査車(以下「次世代小型ローバー」)の概念設計について、トヨタ自動車からの技術評価および品質向上の支援を受けることを目的としています。

契約の主旨は、システムレベルでの技術的評価を通じて、次世代小型ローバーの設計を最適化し、探査性能およびデータ収集能力の向上を図る点にあります。ispaceは月着陸ミッションを通じて得られるデータの収集・提供を事業と位置付けており、ローバー性能の向上は同社のデータサービス強化に直結します。

契約の対象と期待される支援内容

本契約でトヨタ自動車が支援するのは、概念設計段階における技術評価と品質向上のための支援です。トヨタ自動車は自動車開発で培ったシステム設計・統合の知見を有しており、これをローバー開発に応用します。

具体的には以下の分野での支援が想定されます。

  • システムレベルの技術評価(設計の妥当性、信頼性評価など)
  • 品質向上のための手法提供(信頼性設計、品質管理プロセスの適用)
  • 設計最適化に向けた統合的なアーキテクチャ検討
契約当事者
株式会社ispace(代表:袴田武史)とトヨタ自動車株式会社(代表取締役社長:佐藤恒治)
発表日時
2025年10月22日 15時32分
支援内容
次世代小型ローバーの概念設計に対する技術評価および品質向上支援

ispaceの事業背景とミッション計画 — これまでの実績と今後のスケジュール

ispaceは「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンとして月面資源開発を進める宇宙スタートアップです。2010年の設立以来、日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で事業を展開し、現在約300名のスタッフが所属しています。Google Lunar XPRIZE競争で最終選考に残ったチームの一つである「HAKUTO」を運営した経歴を持ちます。

事業の中核は、小型ランダー(着陸船)と月面ローバーの開発・運用を通じた月輸送サービスおよび月面データサービスの提供です。ミッションを通じて得られたデータや技術をフィードバックし、月市場参入を支援するデータビジネスを構築することを目的としています。

これまでの打ち上げ実績

ispaceはランダー打ち上げによる技術実証を継続してきました。具体的には、2022年12月11日にSpaceXのFalcon 9を用い同社初となるミッション1のランダーを打ち上げ、続くミッション2も2025年1月15日に打ち上げを完了しています。これらは研究開発(R&D)目的のミッションで、ランダー設計の検証や月面輸送サービスとデータサービスの事業モデル検証を狙いとしました。

ミッション1とミッション2の成果により、ispaceは月周回までの輸送能力やランダーの姿勢制御、誘導制御機能の実証に成功したと報告しています。これらのデータやノウハウは今後のミッションに反映されます。

今後のミッション予定とSBIRに関する注記

ispaceはミッション3以降で自社開発の月面探査車および次世代小型ローバーを月に輸送し、運用を通じて月面走行データ等を取得していく計画です。ミッション3(正式名称:Team Draper Commercial Mission 1)の打ち上げは2027年に予定されています(当時の予定として発表)。

さらに、ミッション4(旧ミッション6)については、日本で開発中のシリーズ3ランダー(仮称)を用いる計画で、経済産業省のSBIR(Small Business Innovation Research)補助金を活用する想定です。発表時点(2025年10月)では当初の2027年打ち上げ見込みから変更され、開発計画上は2028年内の打ち上げとなる見込みであり、最終的な計画変更は経済産業省の認可を待つ段階にあることが明記されています。

トヨタ自動車との連携意義とシスルナ構想への位置付け

トヨタ自動車は長年にわたり自動車分野で培ってきたシステム開発と統合に関する深い知見を有しています。加えて、トヨタはJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同で有人与圧ローバー(トヨタ称:ルナクルーザー)を開発している点も重要です。こうした背景から、ispaceとトヨタの連携は互いの知見を補完する意義を持ちます。

ispaceは今回の取り組みを、将来的な月面および月周回インフラストラクチャーを民間主導で構築する「シスルナ構想」の検討・推進の一部として位置付けています。民間事業者間の協力体制構築を進める中で、トヨタ自動車との協業も連携の重要な一環とされています。

当事者からのコメント

株式会社ispace 代表取締役CEO & Founder 袴田武史氏のコメントは次の通りです。袴田氏はトヨタ自動車との契約により、小型月面ローバーの技術検証が進む点を評価し、これまでのミッションで得た経験とデータに基づく次世代ローバー開発への支援が、トヨタ自動車のスペースモビリティ開発にも貢献する可能性を指摘しました。さらに、多様なステークホルダーと共に信頼性と安全性の高いローバー開発および月面探査の実現を目指す意向を示しています。

トヨタ自動車株式会社 先進スペースモビリティ開発部長 山下健氏のコメントでは、本契約を通じてトヨタ自動車の知見を新たな分野に適用する機会であると同時に、宇宙機開発で実績を持つispaceから実践的な知見を得る場であると位置付けられています。両社の連携によりローバー開発の充実・加速が期待され、民間主導の月面開発構想への参画を通じてスペースモビリティ事業の具体化を進めたいという考えが示されています。

連携の狙いとデータ活用の流れ

ispaceは月面走行データやその他取得データをデータサービスとして提供しており、これらのデータは民間企業や研究機関に対して価値あるインプットとなります。本契約においては、トヨタ自動車が評価した技術的な観点を反映した設計改良を行うことで、より高品質なデータ収集が期待されます。

具体的なデータ活用の流れは次のように想定されます。ispaceが次世代小型ローバーをミッションで運用→月面走行データを取得・解析→データサービスとして提供→トヨタ自動車はスペースモビリティ開発(ルナクルーザー等)における設計や運用手法の改善へ活用。こうした循環により両社の技術向上と事業の拡大が見込まれます。

  • ispaceの取得データ:月面走行データ、姿勢制御・誘導挙動データ、環境データ等
  • トヨタの活用領域:スペースモビリティの設計・品質向上、運用ノウハウの整備
  • 期待される成果:ローバーの信頼性向上、データ品質の向上、月面インフラ構築への寄与

要点整理(表形式)

以下の表に、本件に関する主要情報を整理しました。表の後に簡潔な締めの文章を付けて、本記事を終えます。

項目 内容
発表日 2025年10月22日 15時32分
契約当事者 株式会社ispace(代表:袴田武史、証券コード9348)とトヨタ自動車株式会社(代表取締役社長:佐藤恒治)
契約の目的 次世代小型ローバーの概念設計に対する技術評価および品質向上の支援
期待される支援内容 システムレベルの技術評価、品質管理手法の適用、設計最適化支援
ispaceの代表コメント 袴田武史(代表取締役CEO & Founder):両社の協力により信頼性・安全性の高いローバー開発を目指す旨のコメント
トヨタの代表コメント 山下健(先進スペースモビリティ開発部長):両社の連携でローバー開発の充実・加速を期待する旨のコメント
ispaceの過去実績 ミッション1(打上げ:2022年12月11日)、ミッション2(打上げ:2025年1月15日)により姿勢制御・誘導制御等を実証
今後のミッション予定 ミッション3(Team Draper Commercial Mission 1):2027年予定、ミッション4(シリーズ3ランダー使用、SBIR対象):2028年内の打上げ見込み(2025年10月時点)
関連の枠組み 民間主導の月面・月周回インフラ構築「シスルナ構想」への連携
関連リンク https://ispace-inc.com/jpn/news/?p=7976

本件は、自動車分野で培われたシステム設計・統合技術と宇宙ミッションの実績が融合する事例として注目される。ispaceは得られたデータを通じて月面探査技術の高度化を図り、トヨタ自動車はその知見をスペースモビリティの実装に活かす構図が想定される。ミッションスケジュールや計画変更等の詳細は関係省庁の認可や今後の進捗により更新されるため、公式発表や関連情報の確認が有用である。

参考リンク: