11月15日開幕 徳川美術館で源氏物語絵巻全点公開
ベストカレンダー編集部
2025年11月3日 22:05
源氏物語絵巻全点公開
開催期間:11月15日〜12月7日
平安の物語絵巻が名古屋に再集結──徳川美術館開館90周年記念特別展の全容
徳川美術館は開館90周年を記念して、国宝「源氏物語絵巻」を10年ぶりに全点一挙公開する特別展を開催します。発表は2025年11月3日19時39分。平安時代に描かれた現存最古の物語絵巻が、名古屋で一堂に会する機会です。
この展覧会は、尾張徳川家伝来の徳川本と五島慶太所蔵の五島本という、同じ作品が異なる伝来を経て異なる形で残された二つの国宝と、断簡として伝わる断片類を含めたすべてを公開する点に大きな意義があります。会期は2025年11月15日(土)から12月7日(日)までで、徳川美術館本館展示室で開かれます。
発表の背景と作品の位置づけ
「源氏物語絵巻」とは、紫式部の『源氏物語』を詞書(文章)と絵で表した巻物で、多くのバリエーションが制作されました。現存する最古かつ最高傑作と評される国宝の「源氏物語絵巻」は、徳川美術館と五島美術館が所蔵する作品群のみが国宝に指定されています。
現存図は19図で、色褪せや剥落など損傷が見られる状態にあります。断簡は9点が知られ、そのうち2点は所在不明のため国宝指定からは外れていますが、今回の展覧会では国宝本と断簡のすべてを同時に展示します。
変転する保存形態と修理の軌跡――額装から巻子装へ戻るまで
この絵巻は長年にわたり保存形態を変えてきました。昭和7年(1932年)には、尾張徳川家伝来の徳川本と五島慶太所蔵の五島本が、保存のために巻子装から分解され、絵と詞書を分離して台紙に貼る「額装」へ改装されました。当時の改装は保存のための処置でしたが、経年による影響が後年問題を生じさせました。
平成24年(2012年)から4年間、徳川本の絵15図と詞書の一部に対して本格的な修理が行われました。修理後に台紙貼りでの保存を継続する計画がありましたが、桐箱の収縮が台紙に反りを生じ、本紙に張力がかかることで剥落や亀裂が誘発されていることが判明しました。そのため文化庁文化審議会の審議を経て、平成28年(2016年)からさらに4年間をかけて、詞書の修理および再び巻子装へ改装する工程が実施されました。
平成復元模写事業と再現の試み
失われた色や剥落が見られる現存図の原姿を復元するため、平成11年(1999年)から平成17年(2005年)にかけて「平成復元模写事業」が実施されました。最先端の分析と学術的調査に基づき現代の画家が模写を行い、平安の色彩と銀装の表情を可能な限り再現しています。
徳川美術館所蔵の復元模写作品(加藤純子筆、平成17年)などを通じて、当時の色彩感覚や銀の光沢がどのように見えたかを視覚的に体感することができます。これらの復元は、現存本の損傷を補う学術的かつ視覚的資料としても重要です。
展示の見どころと鑑賞のポイント
展覧会では、徳川本(巻子装に復した形)と五島本(額装の形)という二つの異なる姿で国宝を鑑賞できます。形態の違いは保存史を物語ると同時に、絵巻という媒体の鑑賞体験の差異も示します。
また、第36帖「柏木」から第40帖「御法」までの場面が通しで展示され、物語のクライマックスにあたる重要場面群が揃って見られる機会となります。これにより物語上の因果や人物関係の流れを、絵画表現として一続きに追うことができます。
視覚表現の特徴
人物表現の特徴としては、目や鼻を略式化して描く平安絵画特有の表現「引目鉤鼻(ひきめかぎばな)」が挙げられます。目は一見単純な線に見えますが、実際には複数の細い線で瞳の位置を示すなど、微妙なニュアンスで表情が伝えられます。
詞書には金銀の散らしが施された料紙が用いられ、詞書と絵が一体となることで絵巻特有の世界観が完成します。詞書の黒変は銀装飾の変質によるもので、経年の痕跡から鑑賞史を読み取ることも可能です。
重要な場面の解説
- 柏木(三)
- 光源氏が赤子の薫を抱く場面。薫は妻・女三宮と甥・柏木の関係から生まれた子と知られながら、光源氏が我が子として抱く姿には父性と苦悩が交錯します。
- 鈴虫(二)
- 光源氏と冷泉院が向き合う場面。冷泉院は表向きは異母弟ですが、実は藤壺中宮との密通で生まれた実子であり、互いに真実を語らないまま複雑な情感が漂います。夕霧が笛を奏でる静謐な場面も描かれます。
展覧会の実施情報・アクセス・観覧上の注意
展覧会の正式名称は「徳川美術館開館90周年記念特別展 国宝 源氏物語絵巻」。会期は2025年11月15日(土)~12月7日(日)、開館時間は10:00~17:00で、最終入館は15:30です。混雑対応のため最終入館時間が通常より1時間早く設定されています。
休館日は原則月曜日ですが、11月24日(月祝)は開館、11月25日(火)が休館となります。会場は徳川美術館本館展示室です。
料金・販売・注意事項
- 一般:1,600円
- 高大生:800円
- 小中生:500円
- 毎週土曜日は高校生以下無料
- 高齢者割引、障がい者割引は適用可。それ以外の優待は利用不可
- 団体の受け入れは規定数に達したため停止(団体券等の取扱いはありません)
- 同時期開催の企画展「尾張家臣団」展も同料金で観覧可
- 日付指定のオンラインチケットを販売中(詳細は公式案内参照)
会場所在地・アクセス
徳川美術館 〒461-0023 名古屋市東区徳川町1017。電話:052-935-6262(問い合わせは月曜日を除く10:00~17:00)。公式サイトは下記のURLを参照してください。
アクセスはJR中央本線「大曽根」駅南口より徒歩8分、基幹2系統の市バス・名鉄バス「徳川園新出来」下車徒歩3分、名古屋観光ルートバスメーグル「徳川園・徳川美術館・蓬左文庫」下車すぐ。美術館南側に無料駐車場17台あり。
主催・関連情報
- 主催
- 徳川美術館・名古屋市蓬左文庫・中日新聞社・日本経済新聞社・毎日新聞社・NHK名古屋放送局
- 関連リンク
- https://www.tokugawa-art-museum.jp/news/%e6%ba%90%e6%b0%8f%e5%b1%95%e3%81%ae%e5%86%8d%e5%85%a5%e9%a4%a8%e4%b8%8d%e5%8f%af/
会期中は混雑が予測されるため、余裕を持った来館が推奨されています。詳細や当日の入場方法、オンラインチケットの取り扱いについては公式サイトの「詳細を見る」ページでご確認ください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 展覧会名 | 徳川美術館開館90周年記念特別展 国宝 源氏物語絵巻 |
| 会期 | 2025年11月15日(土)~12月7日(日) |
| 開館時間 | 10:00~17:00(最終入館15:30) |
| 休館日 | 月曜日(ただし11月24日(月祝)は開館)、11月25日(火) |
| 会場 | 徳川美術館 本館展示室(名古屋市東区徳川町1017) |
| 料金 | 一般1,600円/高大生800円/小中生500円(毎週土曜は高校生以下無料) |
| 展示内容 | 国宝「源氏物語絵巻」(徳川本・五島本)全点および断簡のすべての同時公開 |
| 主催 | 徳川美術館・名古屋市蓬左文庫・中日新聞社・日本経済新聞社・毎日新聞社・NHK名古屋放送局 |
| 問い合わせ | 徳川美術館 電話:052-935-6262(月曜を除く10:00~17:00) |
| アクセス | JR中央本線「大曽根」駅南口徒歩8分/市バス・名鉄バス「徳川園新出来」下車徒歩3分/駐車場17台(無料) |
本展は、平安期に成立した絵巻文化の原点にふれられる貴重な機会です。修理と保存を経て形を変えながら伝えられてきた国宝の絵巻群を、作品史・保存史の両面から鑑賞できるよう構成されています。来場前に公式情報で最新の入場方法やチケット情報を確認することが望ましいでしょう。
参考リンク: