2034年に3,964億ドルへ サイバー市場の成長予測
ベストカレンダー編集部
2025年11月18日 06:08
サイバー市場報告書
開催日:11月17日
世界のサイバーセキュリティ市場:拡大する規模と成長ドライバー
エマージェン・リサーチの報告によれば、世界のサイバーセキュリティ市場は2024年に1,927億米ドルに到達し、2034年には3,964億米ドルに拡大すると予測されています。予測期間を通じた年平均成長率(CAGR)は7.4%と見込まれており、サイバー脅威の巧妙化とデジタルトランスフォーメーション加速が市場拡大を牽引していると分析されています。
調査は、攻撃頻度の増加、クラウドやIoTの普及、リモートワークモデルの定着、そして各国での法規制強化を主な成長因子として挙げています。これに伴い企業や公共機関はリスク管理上、サイバーセキュリティ投資を優先させる必要が高まっていると報告されています。
世界的なコストとアクセス方法
エマージェン・リサーチは、データ侵害の世界的平均コストが456万米ドルに達している点を指摘しています。このコストは、侵害対応、賠償、サービス復旧、ブランド損失などを含む総合的な経済的影響を反映しています。
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- 出典
- Emergen Research(Marketysers Global Consulting LLP発表)
- 発行日時
- 2025年11月17日 21時58分
日本市場:急成長の実績と直面する具体的脅威
日本のサイバーセキュリティ市場は世界平均を大きく上回る成長を示しています。報告では2024年の市場規模を約86億5,000万~180億米ドルと推定し、2033~2034年には343億~433億米ドルに達すると予測、CAGRは13.5~14.6%にのぼるとしています。
こうした急成長は、企業の投資増加だけでなく、脅威環境自体の深刻化にも起因します。事実として、2024年度の国内における個人情報漏洩件数は2万1,000件超(前年比58%増)に達し、多くの組織が頻繁に攻撃を受けています。
攻撃の実態と被害事例
調査は、全国の組織が週平均で1,003件の攻撃に直面していると示しています。攻撃の構成比は、マルウェア26%、フィッシング12%、パスワード攻撃10%となっており、多様な手口が横行しています。
近年の代表的インシデントとして、2025年初頭のDIC宇都宮中央クリニックのランサムウェア被害(約30万件の患者記録影響)、損保ジャパンの727万人規模のデータ漏洩、NTTコミュニケーションズの約17,891社の法人顧客が被害を被った不正アクセスが挙げられます。金融分野でも影響は顕著で、2023年の銀行詐欺による損失は87億円超と推計されています。
| 指標 | 数値 / 備考 |
|---|---|
| 2024年の日本の個人情報漏洩件数 | 2万1,000件超(前年比+58%) |
| 週平均攻撃数(組織あたり) | 1,003件 |
| 攻撃の内訳 | マルウェア26%、フィッシング12%、パスワード攻撃10% |
| 主なインシデント例 | DIC宇都宮中央クリニック(約30万患者記録)、損保ジャパン(727万人)、NTTコミュニケーションズ(約17,891社) |
| 銀行詐欺による損失 | 2023年:約87億円超 |
政策・規制と市場構造:投資と法的枠組みの変化
日本の規制環境は市場変革を促進する重要な原動力です。個人情報保護法(APPI)はEUのGDPRと整合する形で改正が進み、改正APPIは2022年4月に施行されました。違反に対する罰則は組織で最大1億円(約81万5,000米ドル)、個人で最大1年の懲役または100万円の罰金に強化されています。
さらに、日本政府は2026年施行を想定した新たな規制措置を準備しており、基準を満たさない民間企業は国の補助金を受けられなくなる可能性があります。加えて、当局が平時の通信データ監視や外国サーバーの無力化を可能にする新法が可決されており、サイバー防衛能力の強化が進められています。
政府の取り組みと人材計画
政府は内部通信の暗号方式を公開鍵暗号から耐量子暗号へ移行する方針を検討しており、量子コンピュータによる攻撃に対する耐性を高めることを意図しています。またサイバーセキュリティ人材の拡充も重要課題と位置づけられ、現行の約2万4,000人の専門家を2030年までに少なくとも5万人に増加させる目標が掲げられています。
経済産業省(METI)の有識者会議は、実需に対応するには約11万人の熟練専門家が必要と試算しており、人材育成や研修、派遣といった市場機会が拡大する見込みです。
- 規制のポイント
- APPIの強化、2026年の補助金制約、当局の通信監視・外国サーバー無力化の法整備
- 人材目標
- 2024年:2万4,000人 → 2030年:5万人(目標)
技術トレンド、業界構成、課題と経営への示唆
技術面では、人工知能(AI)・機械学習、ゼロトラスト・アーキテクチャ、拡張検知・対応(XDR)、およびクラウドネイティブのセキュリティソリューションが主要な潮流となっています。特にAIは脅威検知・対応の自動化と誤検知低減に寄与することが期待されており、医療分野ではAI主導のセキュリティが今後5年間で約15%のCAGRで成長すると予測されています。
また、多くの企業がセキュリティ運用を外部のマネージドセキュリティサービスプロバイダー(MSSP)へ委託しており、マネージド検知・対応(MDR)やSOC-as-a-Serviceが普及しています。これには人材不足と脅威の複雑化が背景にあります。
市場構成の注目点とセグメント別の動向
導入モードではクラウドベースのソリューションが日本市場をリードし、導入セグメントで40%以上の市場シェアを占めています。CSPM、CWPP、SSPMなどのクラウドセキュリティ製品が注目されていますが、銀行や防衛、政府機関などの敏感な分野ではオンプレミスでの導入も依然として重要です。
業界別ではBFSI(銀行・金融サービス・保険)が日本市場の35%以上を占める最大セクターとして位置づけられ、ヘルスケア分野も高成長領域です。報告ではヘルスケア市場が2024年13億米ドル→2033年53億米ドルへとCAGR15.7%で拡大すると見込まれています。
- ハードウェア・インフラ保護:2024年において50.8%超の市場シェア(ファイアウォール、IDS/IPS等)
- 導入モード:クラウドベース(40%超)、オンプレミス
- 主要業界:BFSI(35%超)、ヘルスケア、IT通信、小売、政府・防衛、製造、エネルギー
主要プレイヤーとセグメンテーション項目
世界および日本市場で影響力が大きい企業として、Palo Alto Networks、Cisco Systems、Fortinet、Check Point、Trend Micro、IBM、FireEye、McAfee、Microsoft、CrowdStrike等が挙げられています。
レポートはさらに以下のセグメンテーション分析を提供しています:コンポーネント(ソリューション、サービス)、導入モード(オンプレミス、クラウドベース)、セキュリティタイプ(ネットワーク、エンドポイント、アプリケーション、クラウド、IoT、OT等)、組織規模(大企業、中小企業)、最終用途産業別(BFSI、ヘルスケア、IT・通信、リテール、政府・防衛、製造、エネルギー等)。
課題と経営層への示唆
主要な課題としては、深刻な人材不足、テクノロジーの断片化による統合難、規制遵守に伴う負担、そして中小企業におけるコスト制約が指摘されています。人材不足はグローバルで400万人超の欠員が予測される中、日本でも多くの企業が採用難を報告しており、特に中小企業や公共機関にとって深刻な阻害要因となっています。
経営層に求められる対応は、サイバーセキュリティを単なるITコストではなく事業継続性と信頼性の観点から戦略的に位置づけ、取締役会レベルでの監督と資源配分を行うことです。また、統合プラットフォームへの移行、MSSPの活用、人材育成投資が競争優位性の確保に直結すると報告は示しています。
要点の整理(数値と主要事項)
以下の表は、本記事で取り上げた主要な数値・事実を整理したものであり、報告書の主要ポイントを一目で確認できるようにまとめています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 世界市場(2024) | 1,927億米ドル(約192.7億USD) |
| 世界市場(2034予測) | 3,964億米ドル(約396.4億USD) |
| 世界CAGR | 7.4% |
| 日本市場(2024推定) | 86億5,000万~180億米ドル |
| 日本市場(2033~2034予測) | 343億~433億米ドル |
| 日本CAGR | 13.5~14.6% |
| データ侵害の平均コスト | 456万米ドル |
| 個人情報漏洩(日本、2024) | 2万1,000件超(前年比+58%) |
| 週平均攻撃数 | 1,003件(組織当たり) |
| 主要インシデントの例 | DIC宇都宮中央クリニック(約30万患者記録)、損保ジャパン(727万人)、NTTコミュニケーションズ(約17,891社) |
| 規制・罰則 | APPI改正:組織は最大1億円、個人は懲役1年または罰金100万円 |
| 政府の人材目標 | 2024年:2万4,000人 → 2030年:少なくとも5万人 |
| ヘルスケア分野(規模) | 2024年13億米ドル→2033年53億米ドル(CAGR15.7%) |
本稿はエマージェン・リサーチのレポート内容を基に、世界および日本の市場規模、成長率、具体的脅威事例、法制度・政策動向、主要テクノロジー、課題と経営的含意を整理して報告しました。詳細な調査方法や完全な目次等はレポートページで確認できます: https://www.emergenresearch.com/industry-report/cyber-security-market
参考リンク: