マリンバースのブリ人工種苗が高水温期を克服
ベストカレンダー編集部
2025年12月1日 19:49
ブリ人工種苗初出荷
開催日:6月1日
夏の高水温期を越えて報告されたブリ人工種苗の現況
株式会社マリンバース(以下「マリンバース」)は、株式会社FOOD & LIFE COMPANIES(F&LC、本社:大阪府吹田市、代表取締役社長 CEO:山本雅啓)と株式会社拓洋(本社:熊本県熊本市、代表取締役社長:山本宇宙)が共同出資して2022年4月に設立したジョイントベンチャーです。マリンバースは、自社で開発したブリの人工種苗(稚魚)を養殖事業者向けに2025年6月から販売を開始しています(プレスリリース発表日時:2025年12月1日 14時00分)。
今回の発表では、この人工種苗が日本の養殖で最初の難関の一つとされる7月~9月の夏の高水温期を無事に乗り越え、良好な成育状況にあることが報告されました。2025年11月下旬に撮影された成育状況の写真も提示されており、初年度の販売分が高水温期を経て順調に育っていることが確認されています。
高水温期の意味と今回の成果の重要性
夏季の高水温は、養殖にとって稚魚の生残率や成育に直接影響を及ぼす重要な要因です。特にブリは養殖が盛んな反面、稚魚の成育は水温変動に敏感であり、自然環境に頼る種苗供給では安定性に課題がありました。
マリンバースが開発した人工種苗が高水温期を乗り越えたことは、種苗の初期生育管理手法や育成環境制御が実用段階に達しつつあることを示しています。これにより、今後の安定供給に向けた重要な一歩が示されたといえます。
プロジェクトの目的と背景—天然資源保護と安定調達への取り組み
ブリの種苗は従来、天然採取に依存することが主流であり、産卵期が4月〜7月に限られることから、時期や海洋環境の影響を受けやすく供給が不安定になる課題がありました。近年の地球温暖化に伴う海洋環境変化により天然種苗の漁獲量が変動している点も、供給の不確実性を高める要因です。
このような背景のもと、マリンバースは天然資源を守りながら海洋環境の影響を受けにくい安定的なブリ調達を目指して、完全養殖の実現に向けた研究と事業化を進めています。完全養殖により天然資源に頼らない種苗の供給体制を構築し、海洋環境の保護と安定調達の両立を図ることが目的です。
販売と流通の見通し
2025年6月に開始した人工種苗の養殖事業者向け販売は、同年の高水温期を乗り越えたことで今後の流通拡大の基礎を築きました。発表では、この人工種苗の一部が尾鷲物産株式会社(本社:三重県尾鷲市、代表取締役社長:小野博行)による養殖期間を経て、2027年中にF&LCが運営する「スシロー」で販売される予定であることが明記されています。
この流通スキームにより、消費者向けの店舗で安定した品質のブリを提供することが可能になります。加えて養殖環境や飼料の管理により、脂乗りなど味のコントロールが可能である点が強調されています。
マリンバースの組織情報とこれまでの歩み
マリンバースは、F&LC(「スシロー」運営)と拓洋(マダイ・クロマグロの種苗および養殖生産技術保有)によって設立されました。設立の狙いは、水産資源を持続可能に管理しながら安定的に調達することです。
以下に会社の基本情報と沿革を整理します。会社情報は事業者や関係者が参照できるよう明記されています。
- 会社名
- 株式会社マリンバース(Marineverse Ltd.)
- 所在地
- 〒862-0910 熊本県熊本市東区健軍本町 1 番 1 号
- 代表者
- 代表取締役 山本宇宙
- 事業内容
- マダイの人工種苗の販売、飼料販売、ブリの人工種苗の研究開発、販売
- 資本金
- 500万円
| 年月 | 出来事 |
|---|---|
| 2022年4月 | マリンバース設立 |
| 2022年6月 | 拓洋の技術であるマダイ人工種苗の販売開始、飼料販売開始 |
| 2023年10月 | 広島大学からの委託でプラチナバイオと共同研究、ブリ人工種苗のDNA解析開始 |
| 2024年2月 | ブリ人工授精卵の採卵、人工種苗の生産テスト実施 |
| 2024年7月以降 | 2022年から育てたマダイを「スシロー」の一部店舗で販売開始 |
| 2025年2月 | ブリ人工授精卵の採卵、人工種苗の生産 |
| 2025年6月 | 尾鷲物産へのブリ人工種苗と飼料の販売開始 |
関連企業と提携の役割
提携企業の役割分担も明確です。F&LCは流通・消費のチャネルを持ち、拓洋は種苗・生産技術の知見を保有しています。尾鷲物産は養殖を担い、将来的にはF&LC運営の「スシロー」へと供給される計画です。
この連携により、研究開発から販売までのサプライチェーンを国内で完結させる体制が意図されています。
人工種苗と完全養殖の定義および技術的意義
プレスリリースでは、人工種苗と完全養殖について明確に定義しています。人工種苗とは、天然の卵や稚魚を捕獲する代わりに人工的な環境(例えば水槽)で親魚から採卵し、孵化させて育てた稚魚を指します。
完全養殖とは、人工的に孵化・育成した種苗を親魚まで育て、その親魚から再び採卵しさらに稚魚を育てて成魚にするというサイクルを、天然資源に頼ることなく完結させる養殖技術を意味します。マリンバースはこの完全養殖のサイクルを構築することで、天然資源の一層の保護と、安定的な調達を目指しています。
養殖による品質管理と供給安定化
プレスリリースは、養殖環境や飼料を管理することで水産物の味のコントロールが可能である点を指摘しています。特に脂乗りを良くするなど一定の品質を保持しやすく、消費者に対して安定した商品提供を行える点が特徴です。
人工種苗の導入が進めば、季節や自然条件による供給変動を緩和し、流通側の計画精度や小売・外食での安定供給につながると見込まれます。
要点の整理と本記事のまとめ
以下の表は、本記事で触れた主要なポイントを分かりやすく整理したものです。項目ごとに日時、関係企業、主な内容をまとめています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プレスリリース日 | 2025年12月1日 14時00分 |
| 発表主体 | 株式会社マリンバース(F&LCと拓洋のJV) |
| 販売開始時期 | 2025年6月(養殖事業者向けブリ人工種苗) |
| 高水温期状況 | 2025年7月〜9月の高水温期を乗り越え、良好な成育状況(2025年11月下旬撮影) |
| 将来の流通予定 | 一部は尾鷲物産での養殖後、2027年中にF&LC運営「スシロー」で販売予定 |
| 目標 | 完全養殖の実現による天然資源保護と安定調達 |
| 会社情報 | 所在地:〒862-0910 熊本県熊本市東区健軍本町1-1、資本金:500万円、代表:山本宇宙 |
| 関連の主な経緯 | 2022年設立→2023年DNA解析→2024年生産テスト→2025年本格販売開始 |
以上がプレスリリースの全内容を整理した要約です。関連する技術的な定義(人工種苗・完全養殖)と年表的な沿革、販売と流通の見通し、そして今回確認された高水温期を乗り越えた成育状況について、事実ベースでまとめました。追加の詳細は発表元の公式情報(F&LCのウェブサイト:https://food-and-life.co.jp/)をご参照ください。