岡山大学と廣榮堂、きびだんご原料の安定供給へ共同研究

きびだんご原料連携開始

開催日:11月26日

きびだんご原料連携開始
きびだんごの原材料不足ってどう解決するの?
岡山大学が藤田地区の若手農家とマッチングし共同作付け体制を構築。品種・栽培法、乾燥や貯蔵の標準化で原料の安定供給を目指す。
産地が変わったら味は変わらないの?
育種学や植物生理学の解析でデンプン構造や栽培条件と食感の関係を解明し、科学的に味を再現・改善。必要なら品種改良や工程調整も行う。

岡山の銘菓「きびだんご」を支える農地と人材──原材料調達の現場が直面する課題

国立大学法人岡山大学は、2025年11月26日に開催された「2025年11月定例記者発表(学長発表)」において、株式会社廣榮堂との総合的連携取り組みを発表した。プレスリリースは2025年12月5日付で公表されており(発表時刻:02時27分)、本件は地域の伝統菓子の原材料調達をめぐる現実的な課題に、大学の研究シーズを結集して対処するものとして位置づけられている。

廣榮堂は安政3年(1856年)創業の老舗で、看板商品であるきびだんごは地域文化と結びついた代表的な菓子である。しかし近年、原材料である特別栽培もち米を生産する岡山市高松地区の生産者の高齢化に伴い、同地区での安定調達が困難となっている。こうした状況は単に一社の調達問題にとどまらず、地域の農地管理や次世代の農業経営、伝統食品の継承という広範な課題と直結している。

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課題の具体的内容と地域の実情

課題の背景には、次のような事情がある。生産農家の高齢化により耕作放棄や後継者不在が増え、地場産もち米の継続的かつ長期的な確保が困難になっている点である。廣榮堂は原材料の安定供給を確保するため、新たな産地の探索と地元農家との連携を模索していた。

本連携では、岡山大学の研究者が現地の農業者とマッチングする役割を担い、産地変更に伴う品質維持や味の継承といった課題についても科学的に対応する方針が示された。

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「学×企」だけでない多角的連携──育種・生理学・経済学の協働

この取り組みは単なる産学連携に留まらず、複数の学術分野と外部研究機関の知見を組み合わせる点が特徴である。岡山大学側からは学術研究院環境生命自然科学学域(農)の大仲克俊准教授が現地調整と農家マッチングを担当し、学術研究院先鋭研究領域(資源植物科学研究所)の山本敏央教授(植物育種学)が育種・データ解析の中心を担う。

さらに、公立大学法人秋田県立大学の藤田直子教授(植物生理学)も参画し、もち米の育成条件やデンプン構造が食感や風味に与える影響を共同で解析する枠組みが組成された。経験や勘に依存してきた「伝統の味」を、分子レベルや栽培条件のデータから解明し、科学的に継承・改良することが狙いである。

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生産地の移行と品質管理の仕組み

高松地区での継続調達が困難になったことを受け、岡山市藤田地区の若手農業経営者らとのマッチングを実現し、新たな産地での共同作付け体制を構築した。共同作付けでは生産工程の標準化、特別栽培基準の共有、収穫後の品質管理のルール化などを含め、長期的な原材料確保を目指す。

品質面では、もち米の品種特性、栽培時期、乾燥条件、貯蔵方法などが製品の食感や風味に与える影響を、上記の研究者チームが解析する。これにより、産地が変わっても廣榮堂の「きびだんご」の品質を再現・維持し、場合によっては改良を行うためのデータを取得する計画である。

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環境価値の可視化と消費行動の関係を検証する実証研究

本連携では環境面の価値創造も明確な目的として掲げられている。MS&ADインターリスク総研株式会社との共同研究により、廣榮堂の「むかしきびだんご」に対してカーボンフットプリント(CFP)の算定が行われた。これは製品のライフサイクル全体で排出される温室効果ガスを定量化する手法で、環境配慮を示す指標の一つである。

CFP算定の過程では、原料調達、加工、流通、包装、消費に至る各段階でのデータを収集・分析し、製品1単位当たりのCO2換算値が導出された。あわせて、岡山大学経済学部の天王寺谷達将准教授の研究室が協力し、環境配慮情報が消費者の購買行動に与える影響を検証する実証実験も実施した。

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環境ラベリングと市場反応の実験設計

実証実験は学生や観光客などの消費者サンプルを対象に、CFPの表示有無や説明文の違いが購買意欲や商品評価にどう影響するかを定量的に検証するものである。結果はローカルブランドの価値向上や、新たな販売戦略の基礎資料となる。

これらの取り組みは、地域企業が製品の環境価値を可視化することで市場での差別化を図ると同時に、地域全体の脱炭素に向けた取り組みを促進する狙いがある。算定・実証の成果は、持続可能性やSDGsに資する地域経済の在り方の検討にも寄与する。

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関係者の発言、組織的枠組み、連絡先情報

記者発表では那須保友学長と廣榮堂代表取締役社長の武田浩一氏が登壇し、産学連携を通じた地域課題の解決と価値創造への決意を表明した。武田社長は企業として地域に支えられてきた責務を踏まえ、農業者の高齢化に伴う農地の社会課題に取り組む姿勢を示した。

那須学長は本取り組みを岡山大学の長期ビジョン2050に位置づけ、「地域と地球の未来を共創し、世界の革新に寄与する研究大学」をめざす方針と整合する事例であると紹介している。関係者一覧は以下の通りである。

  • 那須保友(岡山大学 学長)
  • 武田浩一(株式会社廣榮堂 代表取締役)
  • 大仲克俊(岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(農) 准教授)
  • 山本敏央(岡山大学 学術研究院 先鋭研究領域(資源植物科学研究所) 教授)
  • 藤田直子(秋田県立大学 生物自然科学部 教授)
  • 天王寺谷達将(岡山大学 学術研究院 社会文化科学学域(経済)准教授)
  • 佐藤浩哉(岡山大学 研究・イノベーション共創機構 上級URA)
  • 頓宮義記(株式会社廣榮堂 取締役 営業部長)
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公表資料・参考リンクと問い合わせ先

本件に関する公表資料は岡山大学のニュースページやプレスリリースPDFで入手できる。具体的な参照先は以下に掲載する。

岡山大学 ニュース(本件)
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id14883.html
プレスリリースPDF
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20251126-3.pdf
廣榮堂 公式サイト
https://koeido.co.jp/
岡山大学 研究・イノベーション共創機構
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

問い合わせ先は岡山大学 研究・イノベーション共創機構 上級URA 佐藤浩哉の連絡先が公表されている。所在地やメールアドレス(公開文中は@を◎に置換)などは以下の通りである。

問い合わせ先(岡山大学 研究・イノベーション共創機構)
担当:佐藤浩哉(上級URA)
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
E-mail:sato.hiroya◎okayama-u.ac.jp
産学官連携本部(一般問い合わせ)
TEL:086-251-8463 / E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
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取り組みの構成要素と公表された関連プロジェクト

本総合的連携は、原材料供給の確保、品質科学の解明、環境価値の可視化、さらには消費者行動の実証的検証という複数の要素が組み合わさって構成されている。岡山大学の長期ビジョン2050や地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)と連動して展開される点も明記されている。

公表資料には、定例記者発表時の写真や共同研究の構成図、岡山大学の“地域・社会連携”の位置づけを示す資料が含まれている。画像素材はプレスリリース素材としてダウンロード可能である。

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関連プロジェクト・情報源

  • 岡山大学 地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS): https://j-peaks.orsd.okayama-u.ac.jp/
  • 岡山大学 SDGs関連ページ: https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
  • 参考記事:きびだんごにカーボンフットプリントを表示(PR TIMES)

要点の整理(表)

以下に本記事で取り上げた主要な情報を表形式で整理する。本文で示した連携の構造、関係者、目的、問い合わせ先などを項目別にまとめた。

項目 内容
発表機関・日付 国立大学法人岡山大学(プレスリリース公表:2025年12月5日 02:27、記者発表:2025年11月26日)
連携企業 株式会社廣榮堂(本社:岡山市中区、代表取締役社長:武田浩一)
主要な課題 特別栽培もち米の生産農家の高齢化に伴う岡山市高松地区での原材料調達困難
大学側の対応 農学・育種学・植物生理学・経済学などの研究シーズを結集し、産地の再構築、品質科学の解析、環境価値の算定などを実施
共同研究の主な参加者 岡山大学:大仲克俊准教授、山本敏央教授、天王寺谷達将准教授、佐藤浩哉上級URA 他;秋田県立大学:藤田直子教授;MS&ADインターリスク総研協力
環境面の取り組み 「むかしきびだんご」のカーボンフットプリント算定、環境配慮情報が消費者行動に与える影響の実証実験
公表資料・参照URL 岡山大学ニュースページ(https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id14883.html)、プレスPDF(https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20251126-3.pdf)、廣榮堂(https://koeido.co.jp/)等
問い合わせ先 岡山大学研究・イノベーション共創機構 上級URA 佐藤浩哉(E-mail:sato.hiroya◎okayama-u.ac.jp、所在地:〒700-8530 岡山市北区津島中1-1-1)

以上は、岡山大学と株式会社廣榮堂が公表した内容に基づき整理した要点である。本取り組みは地域の伝統的食品の原材料確保と品質継承、環境価値の可視化という複数の課題を同時に扱うものであり、学内外の多様な知見を結集した実装的な産学連携の事例として注目される。画像素材や詳細資料はプレスリリースページから入手可能である。

参考リンク: