国際交流基金賞でマーティ・グロスと鄭起永が受賞
ベストカレンダー編集部
2025年12月5日 16:14
国際交流基金賞授賞式
開催日:10月22日
授賞式は10月22日、国内外からの関係者約180名が出席
2025年度「国際交流基金賞」授賞式が2025年10月22日に東京都内で開催され、受賞者としてマーティ・グロス氏(77)と鄭起永(ジョン・ギヨン)氏(62)が表彰されました。プレスリリースは「国際交流基金賞/地球市民賞」PR事務局によるもので、配信日時は2025年12月5日 12時04分と記載されています。
会場には国際交流、文化芸術、日本語教育に携わる関係者ら約180名が来場しました。外務省からは来賓として鈴木秀生・特命全権大使(広報外交担当政府代表)が出席し、両受賞者への祝意を述べるとともに、長年にわたる活動と国際交流への貢献に謝意を示しました。授賞式は黒澤信也・国際交流基金(JF)理事長の開会挨拶、来賓祝辞、選考委員紹介、平野信行・選考委員長による授賞理由の説明、そして黒澤理事長からの賞状授与の順で進行しました。
式典の式次第と当日の流れ
当日のプログラムは定刻に始まり、選考経過の説明や選考委員の紹介が行われました。受賞者の紹介に続いて、各受賞者によるスピーチが行われ、閉会後にフォトセッションとレセプションが実施されました。
来賓・登壇者には外務省代表の鈴木秀生・特命全権大使、黒澤信也理事長、平野信行・選考委員長らが含まれ、式典を通じて受賞理由や受賞者の業績が改めて共有されました。閉会後は受賞者と関係者によるフォトセッションが行われ、受賞者両氏は来場者に囲まれながらレセプション会場へ向かいました。
受賞者の歩みと活動—マーティ・グロス氏(文化芸術交流)
マーティ・グロス氏(77)はカナダ出身の映画監督、アーキビスト、コンサルティング・プロデューサーとして、日本の伝統芸能や民藝を海外に紹介してきた人物です。受賞理由は、日本の古典芸能や民藝運動を記録・修復・紹介する長年の実績にあります。
氏の代表作としては、名匠たちの上演を記録した映像作品『文楽 冥途の飛脚』(1980年)が挙げられます。この作品は文楽の海外紹介に大きく寄与し、北米での日本古典映画の販売や公開に関するコンサルタント活動、関係者への多数のインタビュー制作にも尽力しました。
- 主な業績
- ・映画『文楽 冥途の飛脚』(監督、1980年)
- ・『陶器をつくる人たち』など初期映像作品の企画制作および国際発表
- ・北米における日本映画の紹介とインタビュー制作(60本超)
- ・現在進行中の『民藝フィルムアーカイブ』による1930年代〜1970年代の記録映像の発掘・修復・公開
グロス氏はスピーチで、1975年に『陶器をつくる人たち』の企画制作で陶芸家バーナード・リーチ氏を訪ねた経験を語り、その際にリーチ氏が1930年代に日本で撮影した映像に深い興味を持ったことを述べました。リーチ氏は1974年度の国際交流基金賞受賞者であり、その縁が今回の受賞にもつながっていると説明しました。
また、国際文化振興会(JFの前身)が1930年代に制作した益子の古い映像の修復プロジェクトや、カビや劣化の激しい16mmフィルムの発見と修復に関する経緯を詳述しました。これらの作業には多大な時間と費用がかかり、デジタル時代以前の困難な作業だったこと、そして最終的に新たな16mm映像コピーの完成に至ったことを伝えています。
- 国際的な映画紹介:JFの支援を得てニューヨークやワシントンでの発表会、ロンドンやマドリードでの上映を実現
- 映画史・文献活動:米クライテリオン社の日本映画担当アドバイザーを長年務め、俳優・監督らのインタビュー制作を多数実施
- 現在の重点活動:『民藝フィルムアーカイブ』で山形、益子、長野、岐阜、丹波、九州、沖縄などを訪問し職人インタビューや映像修復を進行
スピーチの締めくくりでは、これまでの顕彰に対する感謝と「民藝フィルムアーカイブ」への支援継続の呼びかけ、今後も精力的に活動を続けたいという意向を示しました。写真クレジットとして「photo by Grant Delin」の表記も式典資料に含まれています。
受賞者の歩みと活動—鄭起永(ジョン・ギヨン)氏(日本語教育)
鄭起永氏(62)は韓国の日本語教育分野で30年以上にわたり指導的役割を果たしてきた教育者・研究者です。釜山外国語大学校では日本語融合学部を創設し、学部内に三つの専門専攻を設置、1000名を超える学生が学ぶ韓国最大の日本語教育拠点を構築しました。
鄭氏はICTの活用やCan-do評価といった教育手法の導入に先駆的に取り組んだほか、言語教育の枠を超えた実践活動も多数行っています。対馬での漂着ごみ清掃活動、日本企業への就職支援、釜山日本村の設立による継承語教育の実践、日韓文化交流団体の運営など、国際相互理解と友好親善に寄与する取り組みが評価されました。
- 主な業績と活動
- ・釜山外国語大学校における日本語融合学部の創設(3専門専攻、1000名超の学生)
- ・ICT活用、Can-do評価の導入など教育制度面での先駆的取組
- ・対馬での漂着ごみ清掃活動、釜山日本村設立による継承語教育、企業就職支援
- ・日韓文化交流団体の運営を通じた地域交流の推進
鄭氏はスピーチで、自身が日本語に初めて接した1982年(18歳)の経験から語り、釜山外国語大学校第1期生としての入学、大学時代に出会った恩人たちの支援と影響について詳述しました。特に諸田幸徳会長や東海大学の柴田俊造氏らとの出会いがその後の人生を方向づけたことを述べ、大学院時代の指導教員や研究共同体への謝辞を述べました。
教育理念としては「合理的な日韓関係構築のための人材育成」を掲げ、政治やメディアに左右されない人材の育成と日韓関係の底辺拡大の重要性を強調しました。最近は日本語継承語教育や日韓の職業人材交流に関心を持ち、若者が力を合わせてアジアの共同体的な市民として活躍することを期待する旨を表明しています。
選考プロセス、これまでの受賞者一覧と国際交流基金の位置づけ
国際交流基金賞は、国際交流基金(JF)の設立翌年の1973年に始まり、今回で第52回を数えます。選考は「文化芸術交流」「日本語教育」「日本研究・国際対話」の3分野で行われ、内外の有識者と一般公募による推薦から合計106件の候補が寄せられ、有識者による審査を経て受賞者が決定されました。
過去の受賞者には、黒澤明、宮崎駿、是枝裕和、小澤征爾、千宗室、村上春樹、谷川俊太郎、小川洋子、J・ウィリアム・フルブライト、エドウィン・O・ライシャワー、講道館、山海塾など、多岐にわたる分野で国際交流に貢献してきた人々や団体が名を連ねています。そうした歴史的背景の中で、今回の受賞は文化・教育分野での継続的な貢献の証となります。
- 創設:1973年(国際交流基金設立翌年)
- 今回の回数:第52回
- 選考対象件数:106件(有識者と一般公募による推薦)
- 受賞分野:文化芸術交流/日本語教育/日本研究・国際対話
国際交流基金(The Japan Foundation、JF)は、1972年に外務省所管の特殊法人として設立され、2003年10月1日に独立行政法人となった、日本唯一の国際文化交流の専門機関です。JFは「文化」「言語」「対話」を通じて日本と世界をつなぎ、共感や信頼を育むことを目的に活動しています。詳細はJFの公式サイト(https://www.jpf.go.jp/)に掲載されています。
式典における選考委員や関係者の役割
式典では平野信行・選考委員長が授賞理由を説明し、審査の経緯と評価基準が参加者に共有されました。黒澤信也理事長は開会挨拶および賞状の授与を担当し、外務省の鈴木秀生大使が来賓祝辞を述べました。
式典は、選考委員や関係者による厳正な審査プロセスを経て行われた受賞決定を確認する場であり、両受賞者への公的な顕彰とその意義が改めて示されました。
まとめ:受賞内容の要点と式典情報の一覧
以下の表は、本文で取り上げた授賞式・受賞者・選考過程などの主要情報を整理したものです。授賞式の開催日や受賞者の活動分野、選考に関する数値情報を明示しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 賞名 | 国際交流基金賞(第52回) |
| 授賞式 | 2025年10月22日(東京都内) |
| プレス配信日時 | 2025年12月5日 12時04分(国際交流基金賞/地球市民賞PR事務局) |
| 受賞者 | マーティ・グロス(77、映画監督・アーキビスト、カナダ)/鄭起永(ジョン・ギヨン、62、日本語教育者、韓国) |
| 受賞分野 | 文化芸術交流(マーティ・グロス)/日本語教育(鄭起永) |
| 候補件数 | 106件(有識者と一般公募による推薦) |
| 来場者数(式典) | 約180名 |
| 主な式典登壇者 | 黒澤信也(JF理事長)、鈴木秀生(特命全権大使・広報外交担当)、平野信行(選考委員長) |
| 過去の主な受賞者 | 黒澤明、宮崎駿、是枝裕和、小澤征爾、千宗室、村上春樹、谷川俊太郎、小川洋子、J・ウィリアム・フルブライト、エドウィン・O・ライシャワー、講道館、山海塾 ほか |
| その他の関連情報 | マーティ・グロスの「民藝フィルムアーカイブ」プロジェクト、鄭起永の釜山外国語大学校での学部創設や地域活動(対馬の漂着ごみ清掃、釜山日本村、就職支援など) |
| 公式サイト | https://www.jpf.go.jp/ |
今回の授賞式は、文化芸術と日本語教育という異なる領域で長年にわたり国際交流に貢献してきた両氏の功績を改めて確認する機会となりました。式典の運営や選考経過、受賞者が語った具体的なエピソードや今後の活動に関する意欲など、本文で示した情報により受賞の背景と意義が明確になっています。
参考リンク: